雫

23粒。 ページ23

青白かった頬は徐々に赤みを戻し、汗も引いていった。
本だけで培われた知識もなかなか。



ジャンル問わず読んでおいて正解だった。



歪んだ顔が完全に元に戻った頃瞼がピクリと反応し、その次に手の先が数ミリ程度動いた。
そしてゆっくり目が開けられていく。



｢大丈夫？痛くない？｣



黒目がキョロキョロと動きあたしを認識する。
ふにゃりと表情を崩して頷いた。



起き上がろうとするものだから慌てておでこの上に置いた水に濡らしたタオルを退けて手助けをする。
改めて思う、細いなって。
自分を気にするわけじゃないけど下手したらあたしより軽そう。



『夢見たわ、久しぶりに』


｢何？｣


『なんもない原っぱで俺らが笑ってる夢』


｢正夢には…出来なさそうだね｣



ええねん、って笑った。
関わらなかった頃のピリピリした顔は
話すようになってから1度も見ていないことに気づく。



あたしは悪影響を受けているとしても、流星には良い影響が出てるのかもしれない。



『俺はもうずっと前から覚悟してるんやけどさ』


『太陽、いつ見る？』



腕を庇いながらあたしの方を向いた。
あんなことされたら早く見たいと思うよね。



早く解放されたいよね。



｢いつでも、明日でも笑｣



あたしだって別に、何も未練なんかないから。

24粒。→←22粒。

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す