雫

18粒。 ページ18

何も言えずにいるあたしに流星が言葉を繋げていく。



『チビの時から服好きでさ。将来絶対服飾関係の仕事しようと思っててん』



うん、と小さく頷く。
あたしにはそんなものなかった。



『全部奪われて、ここに来て。検査服1枚渡されて思ったわ。しょーもない奴はしょーもない服しか持たへんねやって』



誰の役に立つわけでもない人生。
しっかり夢があった少年は突然線路を変えられ暗闇に放り込まれて。
親がいないというだけで、なぜ実験対象にしてもいいと思ったんだろう。



強く、強く生きていたのに。
ここにいる青年は1人でも、強いのに。



『生きるんや。今度こそ自分の理想通り』


｢羨ましいな｣


『Aは…夢はないん？』


｢考えたこともなかった｣



将来の夢。
あまりにも漠然として真っ白。
そんなものを抱くことさえ許してもらえないと自己判断して、1日を乗り切るのに精一杯だったから。



あたしは流星と違って早く生涯を閉じたかった。
もう生きたくなかった。
不老不死の実験台にされてるのに笑える。



生きるために死ぬ。
それが流星。



あたしは真逆だ。
死ぬために生きていた。



いつか、いつか身体が壊れたら。
その日を10年も待っている。

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