居 眠 り エ ス ケ ー プ 。【ツルネ】

7.我儘 ページ7

「おー！すんげー！」




「凄い…！」




久しぶりに立った的前に私は感激していた




「せっかく弓道場があるというのに、弓道部にはしばらく部員がおらんかった」




湊も目を輝かせている



「そこで校長先生がわしに風舞高校弓道部、再生のミッションを下したという訳じゃ｣




少しだけ、期待した



また、出来るかもって




「俺、中学の武道の必修で中2の後期から弓道やってたんすよ！」




「遼平が？」





「うん！
高校でもやれたらいいなって思ってて！
…はっ！」



すると山之内君は湊と静弥の肩を組んだ





「トミー先生！
この二人、湊と静弥は弓道めっちゃ凄いんすよ！」





「ほお、経験者かね？」





「はい！二人とも中学の時から弓道部っす！」






肩を組まれた静弥は振り返って私を見た





「それはAもだよ」





「ええ？！Aさんも弓道やってたんすか？！」




山之内君のキラキラとした目に少し圧倒されつつ、私は頷いた




「うん、一応」





「一応、なんて言っちゃって」




静弥は微笑しながらそう言った




「だって、一応だから」





「一気に経験者が四人とは…
もはやクリアしたも同然じゃな」





「待ってください！」




閑静な雰囲気の弓道部に湊の声が響く




「俺はどこの部にも入る予定はありません」




「おや、どうして？」




「うちは母が亡くなってから家事はほとんど俺がしてて」




そう話し続ける湊をみて、山之内君はどんどん顔色を悪くしていく




「ごめん！俺なにも知らずに！」



私は湊をちらりと見た




もし一緒に出来きるなら＿＿


でも、そんなの私の勝手な我儘なのかもしれない




「鳴宮君の事は残念じゃが、無理強いはいかん
三人はどうする？」






私がやりたいのは弓道




だけど




「私は、保留でお願いします」






今はなんか違う気がする

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