４４話 ページ44
イルミが無言で首肯すると、Aは「やっぱり……」とより頬の朱を強めた。
「説明するために、わたくしの能力について解説しなければなりません。少し長くなってしまいますが、よろしいでしょうか？」
「能力を明かすの」
「ええ。そうしないとイルミ様には納得して頂けないでしょうし、いずれは話すつもりでしたので、丁度いい機会かと」
ここでもイルミの驚きが更新された。普通、自分の能力──いわゆる“発”は秘匿しておくものである。隠さなくても構わない程度の単純な能力か、あるいは明かすことによって何らかの効果が生じる能力ならともかく、イルミの体感では彼女の能力はそこまで分かりやすいものでもないはずだ。
いくら嫁入りしたからとて、軽々しく話していいものではない。完全にアウェーな空間にいる彼女にとっては切り札たり得るものの可能性もある。だからイルミは、これまで彼女の持つ念についての話題は避けてきた。だというのにこんなにもあっさり開示しますと言われては、なけなしの気遣いが雲散霧消するというものである。
早くも何とはなしの脱力感に苛まれながら、イルミは「分かった。続けて」と促した。
「ありがとうございます。まず、わたくしの系統は放出系です。もし疑いがございましたら速やかに申しつけ下さい、いかなる手段を用いても証明致しますので」
「そこまでしなくていいよ。で？」
「わたくしの能力の一つ、“
「随分曖昧な言い方だけど、自分で制御できない能力なの？」
「いえ！ ……いえ、本来は、できるはずなのですが……簡単に申しますと、料理にオーラを込めて食べた相手の体調その他に影響を及ぼす能力でして、発動には……『料理の最中他のことを一切考えないこと』が必要となります」
その制約を言った途端、Aは恥ずかしそうに目を伏せた。他のことを一切考えない、ということは、あのお握りを作っている間、Aはイルミのことを一心に思い続けていたということになる。しかも無意識で、固有の念が発動してしまうほど強く、ひた向きに。
「料理の工程が複雑であればあるほど影響の度合いは増します。今回は、ただ握るだけのものでしたので、大した効果でもなかったと思いますが……その、申し訳ありません。わたくしも、これが自分の意識の外で発動しうる能力とは思ってもみませんでした」
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神崎コノハ(プロフ) - 凄く好きです (2019年7月9日 23時) (
レス) id: b4ffd0544a (このIDを非表示/違反報告)
ゆづき(プロフ) - 白ウサギさん» コメントありがとうございます！文が冗長になってしまう癖があるので、お褒め頂きとても嬉しいです。ご期待に添えるよう頑張ります！ (2018年12月16日 23時) (レス) id: e4f486b00d (このIDを非表示/違反報告)
白ウサギ(プロフ) - はじめまして！面白くて一気読みしてしまいました。落ち着いていて、すんなりと読むことができる文章、素敵ですね。これからも頑張ってください。続きを楽しみにしています。 (2018年12月15日 13時) (レス) id: b629e84f8a (このIDを非表示/違反報告)
ゆづき(プロフ) - アオクサさん» コメントありがとうございます！読みにくくはないかといつも不安になりながら投稿しているので、読みやすいという言葉はすごく嬉しいです。アオクサさんもイルミ落ちで書いておられるのですね！応援のお言葉に応えられるよう頑張ります！ (2018年11月14日 14時) (レス) id: e4f486b00d (このIDを非表示/違反報告)
アオクサ - コメント失礼します。ツクールではあまり見られない文体ですが、とても読みやすくスッと入ってきます！私なんかには真似できないです……。夢主さんが愛らしいです。同じイルミ落ちのツクール作品を書いている身としては一番好きです、応援しています。 (2018年11月13日 22時) (レス) id: a5e6fd18d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆづき | 作成日時：2018年8月19日 3時
