２４話 ページ24
「オレは予備みたいなものだから、そんなに気負わなくていいんだけどさ」
「……予備？」
訝しげなAの声にはっとした。ゾルディック家の内情に深く関わることを言うつもりはなかったのに、どうして口が滑ってしまったのだろう。普段ならば考えられない失態に、軽い舌打ちを禁じ得なかった。それにAがびくりと肩を竦ませる。自分が何かしたと勘違いしたのか、年相応の少女のようにうろたえている。
ジャポン人は童顔だ。歳は一つ二つしか違わないはずなのに、弟と同じくらいに見える彼女にこうも狼狽されては何だかいたたまれない。適当な言い訳も思いつかず、下手に誤魔化すよりは真実を伝えた方が後の禍根がなくなるだろうと、イルミはため息を一つ挟んで事情を話すことにした。
「そう。うちの家系、よりゾルディック家本来の血が強い子を当主にする慣習があるんだけどさ、オレはそうじゃないんだよね。親父の髪見たでしょ、銀の癖毛。あれが証。で、最近待望の次期当主が生まれたの」
「……だから、血が濃くないイルミ様は予備であると？」
「そういうこと。でもこの次期当主──キルアっていうんだけど、こいつが厄介でね。ちょっと反抗的っていうか、家業を継ぐのを喜ばしく思ってないみたいでさ。もしキルが継がなかったら、長男のオレが当主になる。そうなったらオレがゾルディック家を繋いでいかなきゃいけない。
当然、子どもを作ることになるわけだ。可能性は低いけど隔世遺伝で銀髪が生まれるかも知れないし、やらないよりかはマシ。駄目だったら親父が頑張るしかないね。嫁探しは、半分はそのため」
「半分は？」
言外に、半ば子どもを作るためだけに嫁を迎えた、と告白しても眉一つ動かさない。話を全て聞き終えるまでは冷静さを崩さない、交渉ごとに強いタイプだ。この歳で中々できることではない。内心舌を巻きながらイルミは続けた。
「もう半分は母さんの企み。なんかオレに対して極端な教育をしすぎたみたいで、感受性に欠けるって散々指摘されたんだよね。よく分からないけど。それでまあ、恋人でも作れば多少改善されるんじゃないか、みたいな考えに至ったらしくて。二十歳だしちょうどいいでしょって押し切られてこんなことになった」
前半はともかく、後半はキキョウの言い分をそっくりそのまま言っただけである。今更恋愛だとかをやらせて何になるというのか、情緒に欠けるイルミにはさっぱり理解できなかった。
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神崎コノハ(プロフ) - 凄く好きです (2019年7月9日 23時) (
レス) id: b4ffd0544a (このIDを非表示/違反報告)
ゆづき(プロフ) - 白ウサギさん» コメントありがとうございます！文が冗長になってしまう癖があるので、お褒め頂きとても嬉しいです。ご期待に添えるよう頑張ります！ (2018年12月16日 23時) (レス) id: e4f486b00d (このIDを非表示/違反報告)
白ウサギ(プロフ) - はじめまして！面白くて一気読みしてしまいました。落ち着いていて、すんなりと読むことができる文章、素敵ですね。これからも頑張ってください。続きを楽しみにしています。 (2018年12月15日 13時) (レス) id: b629e84f8a (このIDを非表示/違反報告)
ゆづき(プロフ) - アオクサさん» コメントありがとうございます！読みにくくはないかといつも不安になりながら投稿しているので、読みやすいという言葉はすごく嬉しいです。アオクサさんもイルミ落ちで書いておられるのですね！応援のお言葉に応えられるよう頑張ります！ (2018年11月14日 14時) (レス) id: e4f486b00d (このIDを非表示/違反報告)
アオクサ - コメント失礼します。ツクールではあまり見られない文体ですが、とても読みやすくスッと入ってきます！私なんかには真似できないです……。夢主さんが愛らしいです。同じイルミ落ちのツクール作品を書いている身としては一番好きです、応援しています。 (2018年11月13日 22時) (レス) id: a5e6fd18d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆづき | 作成日時：2018年8月19日 3時
