記憶の欠片集めのおわり ページ17
ねぇ、A。
Aがいなくなってからもうすぐ10年。
Aの分まで生きると決めたあの日から今日まで、今でも僕はAの面影を探してるんだ。
いないってわかっているのに。
理解しているのに。
それでも僕はAの面影を探し続けてる。探さずにはいられない。
「まふ?」
「なんですか? そらるさん」
「心ここに在らずって感じだったから。またいなくなったっていう幼馴染さんのこと考えてた?」
そらるさんの言葉に僕は少し俯いてしまった。
そんな僕を心配そうに見つめてくるそらるさんに心配かけないように。
「いないのはわかってるんですけどね」
なんて誤魔化すようにへらりと笑ってみせた。わかってはいるんだけどやっぱり考えてしまう。
本当は、"いなくなったふりをしてるだけで、どこかからひょっこり帰ってくるんじゃないか"なんてありもしないことを今でも時々想像してしまう。目の前でいなくなるのを確認したのにね。
そんな考えを振り払おうと、そらるさんに何気ない話題をもちかける。
「打ち合わせ、頑張りましょうね」
「そうだな」
「そらるさん」
「んー?」
「僕頑張りますね」
自然と零れた言葉。
「ん? どうした急に」
不意に零れたその言葉にそらるさんは不思議そうな顔をした。
「なんでもいいじゃないですか」
"Aのために頑張ります。"
その言葉は飲み込んで別の言葉に変換する。
「やる気があるのはいいんだけど、空回りだけはするなよ?」
からかうようなそらるさんの声。
でもその表情はとても優しいもので。
少しだけ気恥ずかしくなってそれを誤魔化すように"わかってますよ!"って笑顔でこたえた。
ねぇ、A。
僕は今日も歌ってるよ。
そらるさんっていう相方もいるんだよ。
2人でユニットを組んだんだ。
もうすぐライブもあるんだよ。
出来れば1番いい席でAに見てもらいたかったなぁ。
そんなことを言ってもAはもういないから、僕のそのわがままは届かない。
Aが残してくれた手紙には僕の歌声が好きだと書き記されていた。
だから僕は歌い続けると決めたんだ。
Aが好きだと言ってくれた歌声をたくさんの人に届けるために。
そしてどこかで見守ってくれているAに届けるために。
だから僕を最期まで見守っててね。
そして来世では一緒に幸せになろうね。
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あいろ - 涙が、、、、とってもいい作品でした! (2019年10月13日 8時) (レス) id: 7961ad3a74 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あおい | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/aoihomupe/
作成日時:2019年7月2日 15時