記憶の欠片 とおあまりいつつめ ページ16
"ずっとずっと、真冬のことが好きです。"
"幼馴染としてではなく、1人の異性として。"
"愛してるよ。"
彼女の手紙に書き記されていた愛の言葉を読んで胸が苦しくなった。
ずるい。
ずるいよ。
Aはずるすぎるよ。
「僕だって、好きなのに......。
僕もAのことが好きなのにっ......」
Aからの手紙を読んでボロボロと涙を零した。
零れ落ちた涙が彼女からの手紙に落ちて新しくシミをつくった。
こんなことになるのならもっと早くに想いを伝えるべきだった。
そうすれば今と違う未来が待っていたのかもしれない。
僕と彼女が笑い合っている未来があったのかもしれない。
そんな有りもしない未来を想像しては涙を零す。
きっと彼女は置いていかれる僕の気持ちなんて考えていなかったのだろう。
置いていかれる側の辛さなんて考えもしなかったのだろう。
"生きて欲しい。"
"私の分まで生きて。"
その言葉がまるで呪いのように僕を現世に閉じこめた。
Aのいない世界はモノクロで生きる意味を見いだせないのに。
そんな僕にAは"生きて"と願った。
なんて残酷な願いなんだろう。
だけどAがそう願うのなら、どんなに残酷な願いでも僕は"しょうがないなぁ"と、そう言うしかないのだ。
どうも僕は彼女に甘いらしい。
そんな僕の甘さを知っているからこそ、彼女は手紙で"生きて"と残したのだろうけれど。
「しょうがないからもう少し長生きすることにするよ」
涙と鼻水でボロボロの顔で。
「Aのいない世界はどうしようもなくモノクロな世界だけど」
格好なんてつかないけれど。
「そんな世界に色を付けてくれる何かを見つけるまでは生きてみることにするよ」
彼女に決意表明をするように呟いた。
やっぱり僕はAに対して甘すぎるみたいだ。
でもしょうがないよね。
きっと惚れた弱みってやつなんだと思う。
Aの言う通りもう少しだけ生きてみるから。
だからちゃんと見守っててね。
「好き、大好き、愛してる」
どうかこの声が彼女に届きますように。
そう願いながら呟いた、できることならば直接彼女に伝えたかった言葉たちは誰にも聞かれることなく空気となって溶けていった。
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あいろ - 涙が、、、、とってもいい作品でした! (2019年10月13日 8時) (レス) id: 7961ad3a74 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あおい | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/aoihomupe/
作成日時:2019年7月2日 15時