31 ページ32
「今まであいつらにつけられたことはなかったのか?」
『えっと…誰かの視線を感じるくらいはあったんですけど…』
「は?もっと早く言えよそれ!」
『そ、そんな睨まないで下さいよ!
私は降谷さんみたいに鋭くないから気のせいかもで済ませてたんです!!』
今日何度目かため息をつかれる。
そしてあろうことか、降谷さんは私のほっぺを両側から引っ張った。
『いたたたた痛い痛い!!』
「今後そういうことがあったら、どんな些細なことでも余計なことは考えずに報告すること。わかったか?」
『…ひゃい』
ぱっと手を離される。
割と本気でつねられた。結構痛かった。
ほっぺをさすりながら顔を上げる。
降谷さんは、意外なことにまだ真面目な顔で私のことを見ていた。
「…公安は」
『え?』
彼は、私の目をまっすぐに見つめて静かな声で紡ぐ。
「俺たち公安は、なにがあっても協力者を守らなければいけないんだ」
『………』
「協力者を危険に晒すことだけは絶対にしてはならない。協力者の安全はなによりも優先されるべきことなんだ」
『でも…今回は公安は関係なかったでしょう』
「一緒だ。Aのことは俺が守る」
彼の手が私の頬に触れて、離れた。
降谷さんは目を伏せて続ける。
「それに、Aはまだ高校生だろう」
『……』
その言葉に、ギュッと手を握った。
「未成年を巻き込ませといて危ない目に遭わせられるわけないだろ」
『…そう、ですか』
高校生、未成年。
どっちも事実だ。私はまだ大人の許可がなければなにもできないような年齢だ。
そんなことはわかってる。誰よりも私がわかっていた。
それでも。
髪から床に垂れた水滴を見つめる。私の口は勝手に動きだしていた。
『…降谷さんの中で、私はいつまで子供でいればいいんですか』
「…え?」
『どれだけ時間が経っても、あなたは私のことをあの頃と同じ保護対象としてしか見てないじゃないですか…っ』
「へ…」
爪が食い込むほど拳を握りこんで彼のことを見る。
大きな瞳は丸く見開かれて、バカな私が映り込んでいた。
『守られることなんて最初から望んでないです』
「…A」
『私が今までどんな思いであなたに協力してきたかなんて知らないくせに…!』
「おい、A、」
『私は…っ!』
もう口は止まってくれなかった。
私は気づけば、その言葉を放ってしまっていたのだ。
『降谷さんが好きです』
1505人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紅个 - 面白いです! 頑張ってください。 (7月18日 9時) (レス) @page2 id: 5d6bcaafb9 (このIDを非表示/違反報告)
紅狐 - ◎ (7月18日 9時) (レス) @page2 id: 5d6bcaafb9 (このIDを非表示/違反報告)
紅湖 - 面白い (7月18日 9時) (レス) @page2 id: 5d6bcaafb9 (このIDを非表示/違反報告)
カルビ(プロフ) - はい!降谷さん格好よく書けてます!!大好きです!!良かったらボードで話しませんか?降谷さん語りましょう!! (2019年4月8日 16時) (レス) id: 36c4c5cb96 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - 1さん» ありがとうございますー!続編でも頑張りますね!よろしくお願いします! (2019年4月5日 21時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:立夏 | 作成日時:2019年3月3日 21時