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Aside
『…あ』
先程からパチパチと付いては消えを繰り返していた電球が、ついに付かなくなってしまった。
なにぶん古そうなビルだし、電球にも限界が来たのだろう。
まぁいいや。今夜は月が明るいから、窓から差し込む月明かりだけで案外見える。
ため息をついて床に座り込む。
すると、さっきの男が部屋の中へ入ってきた。
「お迎えが来たようだぜ」
小日向グループの人間が身代金を届けに来てくれたらしい。その事実につい安堵の色を滲ませる。
しかし、そんな私を前に、男はナイフを取り出した。
「これでお家に帰れて一件落着…とでも思ったか?」
『へ…』
「残念だったな。最初に言ったはずだ。俺達の目的は小日向への仕返しだ」
落ち着いていた心拍数が上がりだす。
嫌な予感が体を駆け巡って背筋を冷や汗が伝う。
彼は、そのナイフをさらけ出された私の腹に当てて言った。
「金を届けに来た奴を縛り上げて目の前でお前を殺す。
そのあとそいつも殺して、俺達は金を持って逃げる。元からそういう計画だ。
お前の命はここまでだ。可哀想にな、あんな家に産まれたのが運の尽きだ」
『な…っ』
「そろそろ下にいた仲間達がお前のお供を連れてくるだろうさ。娘と部下を殺された小日向の反応が楽しみだぜ」
いきなり告げられた言葉に息が止まる。
呑気にこの後のことを考えていた自分があまりにもバカに感じた。
そんなにうまくいくわけがない。生きて帰れるなんて、ここを出てから思ってよ。
ダメだ。殺される。無理だ。適うわけない。
グッと奥歯を噛んでも震えのせいで上手く噛み合わない。
それでも私は彼に言った。
『あの家には産まれてない』
「あ?」
『あの人たちは私が死んでもなんとも思わない。
大体そう簡単に逃げられると思わないで。日本の警察はあなたたち程度すぐに見つけ出す』
「…なにを生意気なことを、」
苛立ちを露わにした彼がナイフを持つ手に力を込める。
来るかもしれない痛みに目を瞑る。
その時だった。
カツン。
暗い静かな廊下に、その音は嫌に大きく響いた。
カツン、カツン、と足音が。そして何かを引きずる音が聞こえる。
開け放たれたドアの前に誰かが立つ。
ちょうど月が雲の中に隠れてあまり見えないけれど、その背格好を、私はよく知っていた。
「──随分と粗末なお仲間ですね。もう少し骨があると思ってたんですが」
彼はそう言って、引きずっていた瀕死の男を片手で投げた。
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紅个 - 面白いです! 頑張ってください。 (7月18日 9時) (レス) @page2 id: 5d6bcaafb9 (このIDを非表示/違反報告)
紅狐 - ◎ (7月18日 9時) (レス) @page2 id: 5d6bcaafb9 (このIDを非表示/違反報告)
紅湖 - 面白い (7月18日 9時) (レス) @page2 id: 5d6bcaafb9 (このIDを非表示/違反報告)
カルビ(プロフ) - はい!降谷さん格好よく書けてます!!大好きです!!良かったらボードで話しませんか?降谷さん語りましょう!! (2019年4月8日 16時) (レス) id: 36c4c5cb96 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - 1さん» ありがとうございますー!続編でも頑張りますね!よろしくお願いします! (2019年4月5日 21時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2019年3月3日 21時