検索窓
今日:19 hit、昨日:436 hit、合計:945,882 hit

27 ページ28

Aside


『…あ』


先程からパチパチと付いては消えを繰り返していた電球が、ついに付かなくなってしまった。

なにぶん古そうなビルだし、電球にも限界が来たのだろう。

まぁいいや。今夜は月が明るいから、窓から差し込む月明かりだけで案外見える。

ため息をついて床に座り込む。

すると、さっきの男が部屋の中へ入ってきた。


「お迎えが来たようだぜ」


小日向グループの人間が身代金を届けに来てくれたらしい。その事実につい安堵の色を滲ませる。

しかし、そんな私を前に、男はナイフを取り出した。


「これでお家に帰れて一件落着…とでも思ったか?」

『へ…』

「残念だったな。最初に言ったはずだ。俺達の目的は小日向への仕返しだ」


落ち着いていた心拍数が上がりだす。

嫌な予感が体を駆け巡って背筋を冷や汗が伝う。

彼は、そのナイフをさらけ出された私の腹に当てて言った。


「金を届けに来た奴を縛り上げて目の前でお前を殺す。
そのあとそいつも殺して、俺達は金を持って逃げる。元からそういう計画だ。
お前の命はここまでだ。可哀想にな、あんな家に産まれたのが運の尽きだ」

『な…っ』

「そろそろ下にいた仲間達がお前のお供を連れてくるだろうさ。娘と部下を殺された小日向の反応が楽しみだぜ」


いきなり告げられた言葉に息が止まる。

呑気にこの後のことを考えていた自分があまりにもバカに感じた。

そんなにうまくいくわけがない。生きて帰れるなんて、ここを出てから思ってよ。

ダメだ。殺される。無理だ。適うわけない。

グッと奥歯を噛んでも震えのせいで上手く噛み合わない。

それでも私は彼に言った。


『あの家には産まれてない』

「あ?」

『あの人たちは私が死んでもなんとも思わない。
大体そう簡単に逃げられると思わないで。日本の警察はあなたたち程度すぐに見つけ出す』

「…なにを生意気なことを、」


苛立ちを露わにした彼がナイフを持つ手に力を込める。

来るかもしれない痛みに目を瞑る。


その時だった。


カツン。

暗い静かな廊下に、その音は嫌に大きく響いた。

カツン、カツン、と足音が。そして何かを引きずる音が聞こえる。

開け放たれたドアの前に誰かが立つ。

ちょうど月が雲の中に隠れてあまり見えないけれど、その背格好を、私はよく知っていた。


「──随分と粗末なお仲間ですね。もう少し骨があると思ってたんですが」


彼はそう言って、引きずっていた瀕死の男を片手で投げた。

28→←26



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (617 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1502人がお気に入り
設定タグ:名探偵コナン , 降谷零 , 安室透   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

紅个 - 面白いです! 頑張ってください。 (7月18日 9時) (レス) @page2 id: 5d6bcaafb9 (このIDを非表示/違反報告)
紅狐 - ◎ (7月18日 9時) (レス) @page2 id: 5d6bcaafb9 (このIDを非表示/違反報告)
紅湖 - 面白い (7月18日 9時) (レス) @page2 id: 5d6bcaafb9 (このIDを非表示/違反報告)
カルビ(プロフ) - はい!降谷さん格好よく書けてます!!大好きです!!良かったらボードで話しませんか?降谷さん語りましょう!! (2019年4月8日 16時) (レス) id: 36c4c5cb96 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - 1さん» ありがとうございますー!続編でも頑張りますね!よろしくお願いします! (2019年4月5日 21時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:立夏 | 作成日時:2019年3月3日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。