question �境将� ページ27
パチン、とニッパーで細いニッケルを切断した。
薄暗い部屋の中、ベースの弦を張り替える作業は続く。
お兄ちゃんがやってるとこを１度見ただけだったけど、調べながらやればなんとかなるものである。
弦を巻いて長さを合わせながら、小さくため息を漏らした。
いつまで続けるの？
私が私にそう問いかける。
答えはなにも浮かばない。
わかってるよ、このままじゃいけない。いい加減にしないといけない。
軽く弦を弾けば、ズレた音が鳴った。
鳴らせば音は響く。持てば重さが手に伝わる。
お兄ちゃんのベースは、確実に私の手の中にある。
張り直した弦の音を合わせ、懐かしい旋律を奏でた。
つい先日会った人のことを思い返す。
…動くなら、きっと今だ。
わかってる。わかってる、だから…こんなに躊躇ってるんだ。
横目で時計を確認すれば、ちょうど午後に差し掛かる頃だった。
ぎゅっと拳を握る。八つ当たりするようにベースを思いっきり弾き鳴らし、奥歯を噛んだ。
＊
『…さむい』
はぁ、と息を吐けば空気が白く染まる。
かじかんだ指先を擦って温めた。いつの間にかすっかり冬になってしまったらしい。
ランドセルを背負った小学生達が目の前を横切っていくのを眺めながら、とある男の子を待つ。
本当は用があるなら家まで行くべきだけど、家に行ったらあの人と鉢合わせるかもしれないのだ。
大きなメガネと不思議なアホ毛が横断歩道の向こうから近づいてくるのが見え、もたれていた電信柱から背を離した。
『コナンくん』
｢Aさん！どうしたの？｣
目を丸くして立ち止まった彼に笑いかける。
小学生を巻き込んで申し訳ないとは思うけど、今頼れるのは彼しかいないのだ。
『うん、ちょっと…頼みたいことがあって』
｢え？｣
『…この前ポアロの近くで会った人に会わせてほしいの』
その言葉に、コナンくんは小学生に似つかわしくない警戒を帯びた表情をする。
この子の立ち位置もいまいちわからないけど、それは後回しだ。
｢…昴さんのこと？｣
『うん、話したいことがあるの。ダメかな』
｢……｣
彼は少しだけ間を置き、パッと可愛らしい笑顔になって｢わかった！聞いてみるね！｣と携帯を取り出した。
どうやら本人に許可を取ってくれるらしい。
彼が携帯電話の向こう側に話している間、こっそり深呼吸をした。
…いける。大丈夫。
通話を切ったコナンくんから出たOKサインに、ぎゅっと心を引き締めた。
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Leil(プロフ) - うわ、久々に小説でガチ泣きした、、、、2人とも一途すぎんか、、、、そしてあんま関係ないけど相変わらず赤井さんかっこいいな。もうだめだ、読み終わったときのよく分からん喪失感がやばい。読むのが止まりませんでした。これからも頑張ってください！応援してます (2021年8月3日 18時) (
レス) id: 36e4ed7dad (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - ゆりあさん» うわーーーん私の方こそ泣きますもったいないお言葉こんなにたくさんありがとうございます！！この感動を文字にできる語彙力がないのがすごく悔しいです…！最後まで読んでくださって素敵なご感想までくださって本当にありがとうございました！！ (2020年3月29日 14時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりあ(プロフ) - 体の水分が全て涙として出ていくぐらい泣きました。コメディもあるのに、メロドラマっぽさもあり、きゅんもあり、貪るように読ませていただきました！これからも応援しています！頑張って下さい。 (2020年3月27日 9時) (レス) id: 45a22d77c5 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - まゆさん» ありがとうございます！！最後のところはすごく悩みながら書いた記憶があるのでそう言って頂けてとても嬉しいです…！最後まで読んでくださってありがとうございました！ (2020年1月27日 19時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 面白かったです^_^最後のシーン、すごく感動しました！涙腺崩壊しました！良い作品ですね！これからも、頑張って下さい^_^ (2020年1月18日 0時) (レス) id: 161c6e3e4c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：立夏
| 作成日時：2018年11月11日 21時
