＊*101 廉side ページ12
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その日は授業中も上の空で
内容も頭に入ってこなかった。
ダメやな···俺。
自分の情けなさに呆れ、机に顔を伏せる。
｢おい、廉。お前帰らねーのかよ｣
｢···うっせ｣
恒例のうるさい奴が俺の元へやってきて
ツンツンと肩を突いてくる。
｢いつも授業終わったら急いで帰ってたのに
めっずらし！｣
｢···黙れ｣
｢なーなー、暇ならカラオケ行こーぜ！
フェス行ってから歌いたくてしょうがなくてさー！
なあ！行こうぜ！！｣
···この害虫はどうすれば駆除できるんやろうか。
プチッと何かが切れる音がした。
｢優太？｣
｢んー？何ー？｣
｢今すぐ俺の前からいなくなった方がいい。
お前のために言っておく｣
俺はそう言って笑顔を浮かべた。
その表情を見て優太が青ざめた顔になる。
｢ひ、ヒッ···！
ば、バカお前、ビビってなんかねえからな！
ちょ、ちょっと用事思い出して···お、俺帰るわ！
じゃあな！｣
そう言い残し教室を飛び出していった。
ああ、平和が戻った。
すっかり静かになり、一時の安らぎが訪れる。
あー···、A、1人で帰れてるかな···。
変な奴に絡まれたりしてへんやろうか。
俺から今日は帰れないって言ったくせに
心配で仕方ない。
···会いたい。
Aの顔が見たい。
別に、Aが俺を好きじゃなくてもええやん。
女を毛嫌いして、存在すら疎ましく思っていた俺が
唯一好きになれた人。
この子なら信じられると思った人。
···帰ろう。
今日は時間を潰して遅くに帰ろうかと思ったけど
やっぱ無理や。
早く帰ってAの笑顔が見たい。
Aにとって俺がどうであれ
俺にとってのAは変わらない。
唯一無二の愛おしい女の子。
うだうだ悩んでいるのがバカらしくなり
もうそれでいいじゃないかと思った。
そうと決まれば早く帰ろう。
急いで学校を出て真っ直ぐ帰宅した。
もしかすると
Aはまだ帰ってきてないのかもしれない。
俺が先に家に着いたら
帰ってきたAを笑顔で迎えよう。
足取りはとても軽く、気分もとても良かった。
その時までは。
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作者名：なっちゃん
| 作成日時：2020年7月29日 19時
