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｢廉、くん？｣
｢A、もう教室入れ。授業始まる｣
｢う、うん···｣
｢俺も戻るから。じゃあな｣
ど、どうしよう···
廉くん、怒ってる？
これ以上何か言っちゃいけないと思って
健人さんにペコっと頭を下げ、教室には入る。
健人さんは微笑みながら手を振ってくれて
そのまま自分の教室に戻っていった。
廉くんも、不機嫌なオーラを放ったまま
私の視界からいなくなった。
···怒らせてしまった。
廉くんが怒ったところ、初めて見た···。
席に座り、下唇をぎゅっと噛む。
｢A···あんた愛されてるわねぇ···｣
｢···え？｣
｢王子、お弁当にAの分のお箸が入ってたって
言って届けに来たのよ。
それでAが資料運びに行ったっきり
戻ってこなくて〜って、あの子方向音痴だから
大丈夫かしら〜って言ったら
めっちゃくちゃ焦った顔して
教室飛び出していったのよ｣
廉くん···。
｢まさかクール王子にあんな一面があっただなんて
···惚れ直しちゃったあたし｣
惚れ惚れとした様子で
頬に手を当て余韻に浸る春ちゃん。
廉くんがそんなに心配してくれてただなんて···。
それなのに私ってば
呑気に健人さんとお茶なんかして···
廉くんが怒って当然だよね。
次会ったら謝ろう···。
さっきは何だか廉くんに見放されたみたいで
すっごく寂しかった。
胸が、ぎゅっと痛んだ。
いつも、大丈夫だよって頭を撫でてくれる廉くん。
私を守ってくれる廉くん。
廉くんに見放されちゃうなんて私···絶対やだよ···。
深く反省して
その日の残りの授業は廉くんのことで
頭がいっぱいだった。
早く···1秒でも早く会いたくてたまらなかった。
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作者名：なっちゃん
| 作成日時：2020年7月25日 0時
