05 エメラルド ページ6
｢｢異動先に元カレがいたぁ！？｣｣
『ちょ、バカ！声でかい！！』
都内某所の蕎麦屋さん。
その一角で大きな声を上げた目の前の２人に、慌てて身を乗り出した。
『誰がいるかわかんないんだから小声で話してよ！ここ本庁近いのよ！？』
｢あ、ごめん｣
｢気にしすぎじゃね？｣
素直に謝ったのは捜査一課の佐藤美和子。半目で楯突いたのは交通課の宮本由美。
２人とも私が前の部署にいた頃の友人である。
さっき警視庁を出る時にたまたま鉢合わせて、そのまま一緒に夜ご飯を食べに来たのだ。
｢へぇー、異動してから死んだように音沙汰ないと思ってたらそんな面白いことになってたとはね｣
『どこが面白いのよ、笑い話じゃないんだからね。ていうか勝手に殺すな』
｢でもほんとに酷い顔してるわよ、ちゃんと寝てる？｣
『寝れるもんなら寝てるわよ』
血を吐くようにそう返せば微妙な笑いを返された。
私だって公安がここまで忙しいとは思ってなかった。
どうやら私が入る直前にかなり大きな案件が片付いたらしく、その後処理がいつまで経っても終わらず人手が足りていないのだ。
｢にしてもAに彼氏がいたとはね…美和子知ってた？｣
｢いや初耳｣
｢だよね、男っ気ないもんねA｣
『本人を前に失礼すぎじゃない？』
頷き合う２人をじとっと睨む。
しかし由美は悪びれもせずに続ける。
｢だって合コン誘っても絶対断ってたじゃん｣
｢誰かと噂が立ったこともなかったしね｣
｢Aって美人だけど近寄り難いんだろうね。私が男でも彼女にしたいとは思わないわ｣
｢わかる｣
『いい加減にしないと怒るわよ』
人のこと堂々とディスりやがって。
しかし否定は出来ないという悲しい現実。
男っ気がないのは事実だ。今のところ、あの人が最初で最後の彼氏である。
しかし眼前に並ぶ御二方はちゃっかりお相手がいらっしゃる。
片や優しい年下刑事。片や超有名なプロ将棋棋士。
聞かなくてもわかる。両者共にうまくいってるのだろう。喜ばしいことだ。
思わずため息を零したちょうどその時、３つのどんぶりをお盆に載せた店員さんがこちらに向かってきた。
｢カツ丼３つ、お待たせしました〜｣
奥から順番に置かれたどんぶりを前に、３人同時にパキンと割り箸を割った。
｢取り調べ室でのカツ丼は本来アウトだけど、取り調べしてたら気分的にカツ丼食べたくなってくるわよね｣
『｢わかる｣』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1649人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
立夏(プロフ) - 明里香さん» わ〜！ほんとですね！ありがとうございます！！直しておきました！！ (2019年1月22日 0時) (
レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 43話に誤字がありました。「聞こえ気がした」ではなく、「聞こえた気がした」です。 (2019年1月21日 23時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - でねぼらさん» ありがとうございます！可愛く書けたらなと思っていたので嬉しいです！！ (2019年1月7日 0時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
でねぼら(プロフ) - 夢主可愛い降谷可愛い (2019年1月7日 0時) (レス) id: eac5f4ad2f (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - レッド・アイさん» わぁぁ３回も！？ありがとうございます…！！ほんと元カップルっていう距離感の微妙な関係が大好きで…ストライク決められて嬉しいです！！更新頑張ります！！ (2019年1月6日 12時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：立夏
| 作成日時：2018年12月24日 21時
