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『心配しなくても仕掛けなんてないですよ』


あれから少しだけ日が過ぎて、暦の上ではもうお盆。

2度目のAの家。警戒しまくりながら歩を進める俺に、彼女は苦笑いで振り返った。

今日はAのお父さんのお仏壇に手を合わせに来たのだ。

線香の煙を眺めながら膝を折り、目を閉じた。


会ったことはなかったけれど、ずっとAから話を聞いていた。

Aが警察官になるためにってよくわからないトラップを家中に仕掛ける少し変わった人。

それでも強くて優しくて、そんな彼に憧れて警察官を目指したといつも言っていた。


もうAは警察官になりたいなんて言わないかもしれない、と思った。

自分の父親が殉職したのだ。

俺はAと同じ夢を目指せることは嬉しかったけど、誰が無理強いなんてできるだろうか。


目を開ければ、Aとそっくりの笑顔を浮かべている随分若い男性の写真が目に入る。

写真は学生時代の物が1枚だけしか残っていなかったらしい。

今までの話から、なんとなく彼の部署は見当がついていた。

…俺が目指している場所だろうと、わかっていた。



『降谷先輩』


その声に隣を見る。Aは仏壇をまだ見ていた。

そして彼女は、はっきりと言い切った。


『私、ちゃんと警察官になります』

「…え?」


いきなりの言葉に目を見開く。正直予想外だった。

けれど、彼女はまっすぐに前を見据えて続ける。


『本当は迷う気持ちだってあります。
でも、ここで逃げたくないなって思って。
お父さんが守ってきたこの国を、今度は私が守りたいんです』


膝の上の白い手がキュッと握られる。

仏壇から目を離して俺を見たAは、いつもの生意気そうな笑顔を浮かべた。


『だから、これからも一緒に頑張りましょうね、先輩!』

「……っ」


無意識に、なんてそんなことはない。今度は意図的に彼女のことを抱きしめた。


『…先輩?』

「……」

『先輩、私もう泣かないですよ』

「…うるさい、わかってる」


好きだと思った。

辛いことがあっても、叩き潰されても、それでも強く輝き続けようとする彼女が誰よりも眩しく見えた。

ずっとこの子の隣にいたいと思った。


白い頬に手を添える。

少し赤くなりながらも不思議そうにしている彼女は、きっとこれから何を言われるかなんてわかっていない。

無計画にも程がある。

それでも今、言いたいと思ったから。


「A、あのさ──」


その日、俺はAに人生初めての告白をした。

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設定タグ:名探偵コナン , 降谷零 , 安室透   
作品ジャンル:恋愛
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立夏(プロフ) - 明里香さん» わ〜!ほんとですね!ありがとうございます!!直しておきました!! (2019年1月22日 0時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 43話に誤字がありました。「聞こえ気がした」ではなく、「聞こえた気がした」です。 (2019年1月21日 23時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - でねぼらさん» ありがとうございます!可愛く書けたらなと思っていたので嬉しいです!! (2019年1月7日 0時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
でねぼら(プロフ) - 夢主可愛い降谷可愛い (2019年1月7日 0時) (レス) id: eac5f4ad2f (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - レッド・アイさん» わぁぁ3回も!?ありがとうございます…!!ほんと元カップルっていう距離感の微妙な関係が大好きで…ストライク決められて嬉しいです!!更新頑張ります!! (2019年1月6日 12時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:立夏 | 作成日時:2018年12月24日 21時

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