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それから俺たちとAは一緒に昼ごはんを食べて、たまに一緒に帰ったり寄り道したりして、なんだかんだわちゃわちゃ過ごしているうちに気づけば季節も夏に変わっていた。
そんな時のことだった。
そろそろ屋上で食べるのも暑くなってきた頃、弁当を広げずに空を仰ぐ。
透き通るような青空をバックに携帯を眺めていれば、隣でヒロが口を開いた。
「今日も来ないっぽいな」
「そうだな、メールも返ってこないし」
「空手の大会もまだ先だし、やっぱ風邪でもこじらせたかな」
「…どうだろうな」
ここ3日ほど、Aは昼休みになっても屋上に来ていなかった。
昨日彼女のクラスに寄ってみれば休みだとのこと。
メールを送っても返信は来ないし、理由も謎のまま。正直風邪なんか引きそうにない奴ではあるけれど。
なんにせよ今日も待っていても来そうにないので、諦めて弁当箱を開ける。
1人いないだけで案外静かなんだな、と空いた空間を眺めた。
そんな時、ヒロが急にこっちを見ずに言った。
「お前も相当惚れてるよなぁ」
「は?誰にだよ」
「誰だと思う?」
いたずらっぽくニヤニヤしながら顔を上げたヒロから黙って目を背ける。
そりゃこの場で指す人なんか1人しかいないけれど。
早く学校来いよな、なんて言葉は口に出さずに心の中だけで呟いた。
結局その後、Aに会えたのは週が明けてからだった。
朝、登校の時に靴箱のところで彼女の後ろ姿を見つけたのだ。
慌てて追いかけてその腕を掴む。
軽く肩を跳ねさせて振り返った彼女は、別段具合が悪そうというわけでもなかった。
Aは俺の顔を見て、丸くしていた瞳を戻した。
『なんだ降谷先輩か、おはようございます』
「違う降谷だ。………え?」
『なんですか?』
「え、いや…」
いつもと違う彼女に目を見張る。
おかしい。
今まで1度も俺の名前を正しく呼ばなかったくせに、間違いなく降谷先輩と呼んだ。
思わず彼女の肩を掴む。こんな程度のことで、とは思ったけれど、なにかある気がしてならなかった。
「どうした、なにかあったか?」
『失礼だなぁ。私だってたまにはちゃんと呼びますよ』
彼女はそう言って緩く笑う。
…違う。やっぱりおかしい。今のは確実に作った笑いだ。
誤魔化そうとするAの目を見つめる。
彼女は一瞬言葉に詰まって、視線を逸らした。
『…降谷先輩』
Aは俺の名前を呼んで、また軽く笑った。
『1時間目、一緒にサボってくれませんか』
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立夏(プロフ) - 明里香さん» わ〜!ほんとですね!ありがとうございます!!直しておきました!! (2019年1月22日 0時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 43話に誤字がありました。「聞こえ気がした」ではなく、「聞こえた気がした」です。 (2019年1月21日 23時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - でねぼらさん» ありがとうございます!可愛く書けたらなと思っていたので嬉しいです!! (2019年1月7日 0時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
でねぼら(プロフ) - 夢主可愛い降谷可愛い (2019年1月7日 0時) (レス) id: eac5f4ad2f (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - レッド・アイさん» わぁぁ3回も!?ありがとうございます…!!ほんと元カップルっていう距離感の微妙な関係が大好きで…ストライク決められて嬉しいです!!更新頑張ります!! (2019年1月6日 12時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2018年12月24日 21時