上司が元カレだったからって公安警察はやめません！【降谷零/安室透】

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受け身は取ったものの、アスファルトに叩きつけられた背中はそれなりに痛かった。

だというのに彼女はすかさず頭を狙って蹴りを入れてくる。

それをギリギリでかわし、慌ててストップをかけた。


｢おい待て！！俺の服見ろよ！！｣

『は？なに…』


彼女は振り被ろうとしていた拳をピタリと止める。

そしてようやく俺の制服に目を向け、固まった。


『…同じ学校の人？』

｢ああ｣

視線が学年別のネクタイに動く。


『センパイ…』

｢そうだな｣


彼女が拳を緩める。それを見て、はー…と体の力を抜いた。

なんなんだこの子…女子高生の戦闘力じゃないだろ…

やっと臨戦態勢を解いてくれた彼女は、ピシッと姿勢を正す。

そして体育会系を思わせる綺麗な角度で頭を下げた。

しかし。


『すみません。どこぞのパツキンヤンキーがナンパでも仕掛けてきたのかと』

｢あ？｣


謝罪の中身は最悪だった。

こいつ今、人のこと堂々とパツキンヤンキーとか言ったな？


『その髪色、確か新入生の間で話題になってた方ですね。えーと……降川先輩』

｢降谷だ｣

『ボクシングやってるゴールデンゴリラ』

｢それ言ったの誰だ連れてこい｣

『いえ、今のは私がこの場で考えました』

｢上等だ、第２ラウンド行くか？｣


めちゃくちゃ生意気じゃないか、なんだこいつ。

大体どの口が俺のことゴリラ呼ばわりしてるんだ。


｢不審者を気絶させた挙句、部外者までボコボコにしようとしてる奴の方がゴリラだろ｣

『女子高生にゴリラはないでしょう、デリカシーって言葉の意味わかります？』

｢アフリカ帰れよ｣

『１人で帰れ』

｢敬語使え｣

『お１人でお帰り下さいませ』


大きな瞳でキッと睨まれた。舌打ちで返した。

お互い様ではあるけれど、流石に頭にきてまだ何か言い返そうとする。

しかし、その前に電信柱の方からうめき声が聞こえてきた。

振り返れば先程の男が立ち上がろうとしている。

二人同時に地を蹴って殴り飛ばした。


『｢お前は寝てろ！！！｣』


ハモった最悪。

両側からのストレートで再び撃沈した男はあっけなくアスファルトに倒れる。

ため息をついて名前も知らない後輩に携帯を渡した。


｢こいつ縛っとくから警察に連絡して｣

『通報するんですか？』

｢するだろ普通｣

『先輩も事情聴取されるかもしれないですよ？』

｢いいよ、付き合う｣


帰るのはそれなりに遅くなりそうだな、と思いながらタオルで手首を縛った。

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