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Aside


結局その後、私は後始末に追われ、上がれたのは深夜だった。

作戦はうまくいった。標的はなにも問題なく捕まえられた。

東側にいた私達はほとんどなにもなく本庁へと帰ってきた。

ほとんど、なにも、なく。


ぎゅっと拳を握る。

耐えていた感情が本庁を出た瞬間に溢れだしそうになって、私は家と逆方向に駆け出した。

ハイヒールで歩道を走って、深夜のカラオケ店の中に入る。

そしてある一角の部屋の扉を乱暴に開けた。


「え!?A!?」

「Aどうしたの!?」


中にいたのは由美と美和子。

マラカスやらタンバリンやらを握って盛り上がってるらしい彼女たちの間に割って入り、マイクを奪い取った。


『元カレの馬鹿野郎ーーー!!!!!!』

「え、なに?」

「なんかあったの?」

『もういい!バカ!!ほんとバカ!!お酒頼んで!!今日はとことん飲んでやるんだから!!』

「ええ?」


躊躇いつつもお酒を頼んでくれる友人達。

握っていたマイクを振りかぶり、叩きつける直前にグッと唇を噛んで堪えた。


謝られた。

許してしまった。

これで彼と私の間には確執なんてものは存在しない。

一気に過去のこととして片付けられた気がした。

あの人は多分、これから私を思い出したりしない。

今までのことはただの思い出に変わる。なんてことないただの部下になってしまう。

きっと気まずさもなく、怒りや恨みすらもなく、私たちの間にはなんの感情もなくなってしまう。


望んでいたことのはずだった。

そうするために私は今、こんなことをしていて。南くんとも付き合って。

泣く資格なんてない。怒る資格もない。

むしろ喜ぶべきことだ。


なんだっていいから、私と彼を繋ぐなにかが欲しかったなんて。

思うことすら、許されることじゃない。


手渡されたビールを一気に煽る。

事実だ。私は、彼の中では過去でしかないのだ。

アルコールのおかげで頭がふわふわする。

緩んだ涙腺を必死に張り詰めて、彼の笑顔を記憶の奥に仕舞い込もうとした。



* * *

「…なんていうか、こじらせてんね」

「意外よね」


佐藤美和子と宮本由美。彼女たちは酒が回って眠っている友人を見ながらそう零した。


「恋愛なんて興味なし!みたいな空気出しときながらね」

「そんな子がここまで惚れるってどんな人だったのかしらね」


まさかその元カレに会ったことがあるとは思いもせず、彼女たちは話を続けた。


「…この人達、なんで別れたのかしらね」

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設定タグ:名探偵コナン , 降谷零 , 安室透   
作品ジャンル:恋愛
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立夏(プロフ) - 明里香さん» わ〜!ほんとですね!ありがとうございます!!直しておきました!! (2019年1月22日 0時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 43話に誤字がありました。「聞こえ気がした」ではなく、「聞こえた気がした」です。 (2019年1月21日 23時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - でねぼらさん» ありがとうございます!可愛く書けたらなと思っていたので嬉しいです!! (2019年1月7日 0時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
でねぼら(プロフ) - 夢主可愛い降谷可愛い (2019年1月7日 0時) (レス) id: eac5f4ad2f (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - レッド・アイさん» わぁぁ3回も!?ありがとうございます…!!ほんと元カップルっていう距離感の微妙な関係が大好きで…ストライク決められて嬉しいです!!更新頑張ります!! (2019年1月6日 12時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:立夏 | 作成日時:2018年12月24日 21時

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