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「降谷さん、1番西の河川敷でホシを発見しました」
七瀬のところまで戻ってきた時、ちょうどイヤホンにそんな南の声が届いた。
「わかった。そのまま追って会場から離れたところで捕らえろ」
そう伝え、西側に配置した部下にも指示を出す。
そして周囲に鋭い視線を送っている彼女に声をかけた。
「七瀬」
『聞いてました。移動しますか?』
「そうだな、南ならすぐに問題なく捕まえるだろうが…」
言いながら人混みの中を掻き分けて駐車場の方へ向かう。
そうしているうちに、思った通り南から捕らえましたと連絡が入った。
作戦が上手くいったことにとりあえず安堵の息を漏らす。…今回、俺ほとんどなにもしてないけど。
雑踏の中でもはぐれず付いてきていた七瀬を振り返る。
彼女の後ろでフィナーレであろう大量の花火が咲いた。
『…?どうかしました?』
「……いや。本庁に戻るぞ」
『はい』
目を逸らしてFDに乗り込む。
彼女も助手席に座ったことを確認し、エンジンをかける。
しかし、そのまましばらく車を発進させずに左隣の彼女に視線を移した。
…綺麗になったよな。
あの頃から既にめちゃくちゃ可愛かったけど、しばらく見ないうちに髪も下ろして大人っぽくなって、誰よりも綺麗だ。
『…降谷さん?』
不思議そうにこっちを向いた彼女を見つめる。
変わってなくない。相変わらずだなんてそんなわけがない。
彼女は新しい恋人を作ってる。俺のことなんて過去のことにして進んでる。
変わってないのは俺の方だ。
自分のしたことは取り返せない。彼女の中ではいつまでも最低な元カレでいいと思っていた。
でも。俺が彼女の中でとっくに過去になっているのなら。
乾ききった喉から、ずっと言いたかった言葉を絞り出した。
「……悪かった」
『…え?』
「あの時。別れた日」
俺の言葉に、彼女はゆっくりと目を見開く。
大きな瞳に最後の花火が映りこんだ。
「謝って許されることだとは思ってないけど…ごめん」
『……』
それだけ言って前を向き、車のアクセルを踏む。
彼女は黙り込んでなにも言わないけれど、それでいいと思った。
自分が自分のために謝りたかっただけだ。最低だけど、それでもこの言葉だけをずっと言いたかった。
けれど、しばらくしてから彼女が息をつくのが聞こえた。
『…いいですよ、もう』
「え…?」
『私は…あなたを好きになったこと、後悔してませんから』
彼女はそう言って、小さく微笑んだのだった。
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立夏(プロフ) - 明里香さん» わ〜!ほんとですね!ありがとうございます!!直しておきました!! (2019年1月22日 0時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 43話に誤字がありました。「聞こえ気がした」ではなく、「聞こえた気がした」です。 (2019年1月21日 23時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - でねぼらさん» ありがとうございます!可愛く書けたらなと思っていたので嬉しいです!! (2019年1月7日 0時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
でねぼら(プロフ) - 夢主可愛い降谷可愛い (2019年1月7日 0時) (レス) id: eac5f4ad2f (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - レッド・アイさん» わぁぁ3回も!?ありがとうございます…!!ほんと元カップルっていう距離感の微妙な関係が大好きで…ストライク決められて嬉しいです!!更新頑張ります!! (2019年1月6日 12時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2018年12月24日 21時