15 サファイア ページ16
『花火大会?』
バキッと栄養ドリンクの蓋を開けながら、私は南くんの言葉に顔を上げた。
先に言っておこう。別にデートのお誘いとかそういうのではない。真面目に仕事のお話だ。
公安が追っていた密輸グループの取引が今夜、花火大会の会場で行われるらしいのだ。
「はい。よりにもよって嫌なところ選んできますよね。向こうからすれば人混みにも関わらずみんな空を見てるからやりやすいんでしょうね、それに夜ですし」
『あー、なるほど…』
ほんとに嫌なところ選んできたなぁ。あそこまで人でごった返した場所ではこちらも捕まえにくい。
南くんから書類を受け取りながら場所を確認する。
…あぁ、やっぱりあそこか。懐かしいな。
「にしても9月下旬のこの時期に花火大会なんてやってるとこあったんですね」
『…私、大分前にこの花火大会行ったことあるよ』
「え、この辺に住んでたんですか?」
『ううん、8月の花火大会に行きそびれたからちょっと遠出して見に来たの』
そう言って最早毎日飲んでる栄養ドリンクを一気に飲みほす。
ちょうどその時、降谷さんから全員集まるように号令がかかった。
あぁ、今夜の持ち場についてかな。
そう思って彼の言葉を聞いていれば、予想通り彼は会場付近での持ち場を1人ずつ指示していく。
想像よりも広範囲に人を配置していることからここで確実にとっ捕まえるつもりなのがよくわかる。
そして彼は一通りの指示を終えたのか、顔を上げた。
あれ、私まだなにも言われてないな。
「最後、1番東側。あと手が空いてるのは…」
『…私です』
素直に小さく挙手をする。
そのあたりなら前に行ったし地理も覚えてる。
しかし、そんな私を見て彼はわずかに目を見開いた。
…え、なに今の。知ってるぞ、あの表情は「あ、やべっ」と思ってる時だ。一体なにをやらかした。
本当に一瞬、誰も気づかないくらいの間だけその表情を浮かべた彼は、すぐに真顔に戻って指示を続けた。
「七瀬は俺と東区画。以上だ」
『え?…っは、はい!』
は!?え、2人でやるの!?
慌てて返事をしたが頭の中は大混乱。
周りの人達が各々の仕事に戻るなか、会場の地図から目が離せない。
浴衣を来てはしゃいでいたあの日が脳内にフラッシュバックする。
違うのだ、別に2人での任務くらい今までなかったわけじゃない。でも今回はわけが違う。
だってあの花火大会、あれは…
私と彼の、初デートの場所なのだ。
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立夏(プロフ) - 明里香さん» わ〜!ほんとですね!ありがとうございます!!直しておきました!! (2019年1月22日 0時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 43話に誤字がありました。「聞こえ気がした」ではなく、「聞こえた気がした」です。 (2019年1月21日 23時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - でねぼらさん» ありがとうございます!可愛く書けたらなと思っていたので嬉しいです!! (2019年1月7日 0時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
でねぼら(プロフ) - 夢主可愛い降谷可愛い (2019年1月7日 0時) (レス) id: eac5f4ad2f (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - レッド・アイさん» わぁぁ3回も!?ありがとうございます…!!ほんと元カップルっていう距離感の微妙な関係が大好きで…ストライク決められて嬉しいです!!更新頑張ります!! (2019年1月6日 12時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2018年12月24日 21時