私と幼馴染のキス練習法【降谷零/安室透】

lesson 08 ページ9

時刻は夜12時を回っていた。

そろそろ眠くなってきて、落ちそうな瞼に力を込める。

しかし相変わらずちんぷんかんぷんな目の前の問に、私はシャーペンをぶん投げた。



『わーん！もうやだ休憩するー！』

｢また？さっきしたばっかりだろ｣


呆れた顔で言う零ちゃんはまだまだ余裕そうだ。

立花A、絶賛期末テスト中であります。

明日は大っ嫌いな数学。

まだまだ終わりそうにないテスト範囲のことは出来るだけ考えないようにしていた。



『わかんないよもう！数学なんて絶対いらないでしょ！』

｢お前、文系科目は悪くないのにな…どこがわかんない？｣

『…全部？』

｢………じゃあ最初から教えてやるから｣



あれ、でも零ちゃん、自分の勉強は？

そう言おうとしたが、そういえば零ちゃんは日頃からしっかりやってるタイプだった。

こんな時間まで起きてるのも、私に付き合ってくれてるからなんだろう。


その優しさが沁みて、大人しくシャーペンを握る。

零ちゃんは一度立ち上がり、私の隣に腰を下ろした。


その距離がなんだか妙に近くて、ちょっとドキリとする。

窓から入ってきた夜風に零ちゃんの綺麗な金髪が揺れる。

無意識のうちに見つめてしまい、こっちを見た零ちゃんと目が合ってハッとした。



『あ、えっと…じゃあこの問題から』


慌てて俯いて言った私に、彼はしばらく返事を返さない。

しかしやがて、意を決したように口を開いた。



｢……やっぱり休憩挟もっか｣

『え？』



思わぬ言葉に顔を上げる。

その瞬間、零ちゃんが私の顎を掴んだ。


あ。やばい。

そう思った時にはもう遅かった。



｢5分だけね｣



甘く囁いた彼はいつものように唇を重ね合わせてくる。

すっかり癖になってしまった感覚に、静かに目を閉じた。

うわ…すごい、テスト中のストレスなんか全部吹っ飛んじゃうな…


苦しくなるまでたっぷり長く続けられ、ゆっくりと零ちゃんが離れた。

……お勉強の時間かな。

うん、今ので元気出た。頑張るか。

そう思いながら目を開ける。


しかし、このとき私は大事なことを忘れていた。

現在、時刻は0時30分。

“深夜”と呼んでもいい時間帯。

要するに、だ。


もしかして：深夜テンション



｢……あ、のさ｣

『なーに？』


そんなこと考えもしなかった私は、零ちゃんの瞳がいつもと少し違うことにも気づかなくて。



｢……舌、入れていい？｣



なんて彼の言葉の意味を理解するのにも、かなりの時間を要した。

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