lesson 29 ページ30
｢なんで渡したくないって思ったか、わかる？｣
『………』
わからない。
なんで自分がこんな嫌な感情を抱いてるのか。
なんで関係ないのに邪魔になるようなことをしてしまうのか。
考えようとした。
だけど全然わからない。
元々、人の気持ちを汲み取るのは得意ではなかった。
それはどうやら自分に対してもそうらしくて、自分の思いの理由なんて、考えれば考えるほどこんがらがる。
『……わかんないよ』
消え入りそうな声でポツリと言った。
そんな私をひーちゃんはじっと見つめる。
そしてしばらく｢うーん…｣と唸り、やがて柵から背を離して口を開いた。
｢よし、じゃあこうしよう｣
『え？』
｢なぁA、俺にもあれやってくんね？｣
『あれって？』
首を傾げる私を見て、ひーちゃんはクスリと笑った。
｢キスの練習｣
『えっっ』
びっくりしすぎて息が止まる。
…え？キスのって、零ちゃんのと同じ？
｢俺の将来の夢だって警察官だし。いいだろ？｣
『へ、あの、いや…』
そうだ、ひーちゃんの夢も警察官だった。
じりじりと屋上の角まで追い詰められる。
え、うそ。ほんとに本気？
汗が首を伝った。
ひーちゃんの顔が近づいてくる。
待って、ダメ。零ちゃん以外とキスなんて…！
『やだ！』
気づいたら目の前のひーちゃんを突き飛ばしていた。
…あ。や、やっちゃった…！
力任せにドンッてやっちゃった…！
ポカンとしているひーちゃんに慌てて頭を下げる。
『ご、ごめんひーちゃ』
｢…なーんてな！｣
『…へ？』
そう言ったひーちゃんは急に笑い出した。
わけがわからなくて顔を上げる。
｢嘘だよ、別に俺になんてしなくていいから｣
『え、え？じゃあなんで…』
｢なぁ、そろそろ気づかないか？｣
『なにに…？』
言いたいことが全くわからない。
そんな私に、ひーちゃんは少し笑った。
｢零とじゃなきゃ嫌なんだろ、キス｣
『へ……』
その言葉にいよいよ頭がショートしそうになってきた。
……え？つまりどういうこと？
手紙を渡すのも嫌で、零ちゃん以外とキスするのも嫌で、それで、それってつまり…？
｢A｣
『は、はい！』
びっくりして思わず大きな声が出る。
｢お前、いい加減ちゃんとその気持ちと向き合わないとダメだぞ｣
『……』
｢そういうの苦手なのはわかってるけど、逃げるなよ。ちゃんと考えろ。もう後回しにするのはやめろ｣
いつになく真剣な瞳に、はい、と小さく頷いた。
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ふゆーれい(プロフ) - に、ニヤニヤが全くとまりませんでした…。あと隣の子から預かってた手紙を零に渡す所が何か辛かった()面白かったです！今更ですが、完結おめでとうございます！ (2022年7月25日 22時) (
レス) @page42 id: 5fc4c4d6bd (このIDを非表示/違反報告)
はろーきてぃ様。 - めっちゃ面白かったです！！さいこおお！がんばれえええ！ (2022年5月27日 23時) (レス) @page42 id: 278a10c8d3 (このIDを非表示/違反報告)
よる - 告白しようとした美少女の性格が好きすぎる…めっちゃカッコいいから振られたとしても堂々としてそうだなぁ (2021年4月17日 13時) (レス) id: 6e0ab3a00d (このIDを非表示/違反報告)
mami - 完結お疲れ様です！凄く面白かったです！ (2019年8月5日 5時) (レス) id: 3ba7cafabb (このIDを非表示/違反報告)
盛りそば。 - なにこれ……萌しかないじゃないですか…尊死(( (2019年7月21日 15時) (レス) id: 2b295a992e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：立夏
| 作成日時：2018年6月15日 21時
