lesson 26 ページ27
『零ちゃん、そんなに持って重くない?』
「大丈夫、これくらいどうってことないよ」
『そう?ありがとう!』
「ん」
夕日が射し込む放課後の廊下を二人で歩く。
抱えているのは数学のノート。
今日は日直だったせいで、先生に雑用を押し付けられた。
1人で運ぶのは重すぎるノートを抱えて死にかけていたら、通りかかった零ちゃんがほとんど持ってくれたのだ。
涼しい顔でひょいっと持った零ちゃんは流石としか言いようがない。
いつも腕立てとかめっちゃしてるもんね、すごいなぁ。
『夏休み明けたのにまだまだ暑いね〜』
「そりゃ9月だからな、もうしばらく暑いだろ」
そうだね、と笑いながら階段を上る。
零ちゃんより先に数段上ってから振り返れば、彼のガラス玉みたいな瞳は夕日が映り込んでキラキラしていた。
思わず見とれていると、零ちゃんが不思議そうに顔を上げる。
2段上にいるのに意外と身長差がなくて、ちょっと驚いた。
『零ちゃん、また背伸びた?』
「あー…そうかも、四月から測ってないしわかんないけど」
『すごいねぇ、私なんか全然伸びないよ』
ふふ、と笑って1段下がる。
『ほら、1段差だとほとんど身長変わんないよ』
そう言いながら零ちゃんと目を合わせた。
と、思ったよりも距離が近くてギクリと固まってしまった。
…え、同じ身長だとこんなに目線が近いんだ。
いつも見上げるばかりだったけど、今は真っ直ぐに零ちゃんの瞳を見れる。
目の前にある零ちゃんの整った顔に少しドキドキしてしまう。
「…いつもより近いな」
『そっ…そうだね』
思っていたことを言われて、びっくりして声が裏返ってしまった。
笑って誤魔化せば、零ちゃんの方も柔らかく笑う。
そして夕日の色が混じった瞳をゆっくりと細めた。
…あ、空気が変わった。
そう思った時にはもう唇が重なっていた。
階段には誰もいない。
遠くで吹奏楽部が練習する音が聞こえる。
ほんの数秒。
触れるだけですぐに離れた。
だけどなんだか幸せで、胸がいっぱいで、えへへと照れたように笑う。
しばらく優しく微笑んでいた零ちゃんが、少ししてから歩き出した。
「行こう。あんまり遅れると先生にどやされる」
『あ、そうだね!急がなきゃ』
橙色に染まる背中を追いかけながら、ずっとこんな日々が続けばいいのになんて考えた。
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ふゆーれい(プロフ) - に、ニヤニヤが全くとまりませんでした…。あと隣の子から預かってた手紙を零に渡す所が何か辛かった()面白かったです!今更ですが、完結おめでとうございます! (2022年7月25日 22時) (レス) @page42 id: 5fc4c4d6bd (このIDを非表示/違反報告)
はろーきてぃ様。 - めっちゃ面白かったです!!さいこおお!がんばれえええ! (2022年5月27日 23時) (レス) @page42 id: 278a10c8d3 (このIDを非表示/違反報告)
よる - 告白しようとした美少女の性格が好きすぎる…めっちゃカッコいいから振られたとしても堂々としてそうだなぁ (2021年4月17日 13時) (レス) id: 6e0ab3a00d (このIDを非表示/違反報告)
mami - 完結お疲れ様です!凄く面白かったです! (2019年8月5日 5時) (レス) id: 3ba7cafabb (このIDを非表示/違反報告)
盛りそば。 - なにこれ……萌しかないじゃないですか…尊死(( (2019年7月21日 15時) (レス) id: 2b295a992e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2018年6月15日 21時