私と幼馴染のキス練習法【降谷零/安室透】

lesson 22 ページ23

夕方になってなっちゃん達ともおさらばし、暗くなってきた頃に自宅についた。


『たっだいまー』

なんて言いながら、階段を上って自分の部屋をドアを開ける。


｢おかえり｣

すると開けてびっくり。部屋の中には零ちゃんがいました。


『びっくりした…どうしたの？』


…あれ？なんか怒ってる？

携帯のボタンをいじる零ちゃんの眉はこれでもかというくらい寄っている。

声も低かったし、なんかあったのかな。

そう思いながら部屋の中に入ると、零ちゃんは急に私の腕を引っ張った。

そしてガラケーの画面をこっちへ向けて大きな声で言った。



｢この男だれ！？｣

『………え？』


ん？男？

なんの話だと思いながら液晶に映された画像を見る。

…あ、さっき男装したなっちゃんと撮ったやつだ。

零ちゃんも男の人と間違えたのか〜そうだよね、わかんないよね、ハイクオリティすぎるもんね。



『これ、なっちゃんだよ』

｢…………は？｣

『なっちゃんが男装してるんだよ！すごいよね〜』

｢……柏木？｣

『うん！そうだよ！』


柏木はなっちゃんの苗字だ。

カコンと零ちゃんの手から携帯が滑り落ちた。

わっ危な、画面割れたらどうするの。

落ちた携帯を拾い上げようとする。

しかしその前に零ちゃんが私の肩を掴んで引き寄せた。



｢くっそ大野の野郎〜〜〜〜｣


大野はちーちゃんの苗字。

そういえばあの写真送ったのちーちゃんだっけ？なんで零ちゃんこんなに怒ってるんだろ。

私を抱きしめた零ちゃんは肩口にグリグリと頭を擦り付ける。

サラサラの髪が当たってくすぐったい。



『零ちゃん？どうしたのー？』

｢なんでもない…なんだよもう…俺かっこわる…｣


その零ちゃんの最後の一言に、私はムッと反応した。

今のは聞き捨てならない。

零ちゃんがかっこ悪い？そんなこと言うなんて、例え零ちゃんでも許さない。



『零ちゃんはかっこいいよ』


私の声に、零ちゃんの動きが止まった。


『零ちゃんはずっとずっとかっこいいよ。
かっこ悪いわけないじゃん。
小さかった時も、泣き虫だった時も、零ちゃんはかっこよかったんだから。

悪い子達に臆せず向かっていったり、私が犬に怖がってたら守ってくれたり、いつもキラキラしてた。

零ちゃんは今も昔もかっこいいよ。』


返事はない。零ちゃんは動こうとすらしない。



『零ちゃーん、聞いてるのー？』

｢…………聞いてる｣



ちらりと横を見ると、真っ赤になった耳だけが見えた。

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