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lesson 16 ページ17

小学生の頃に来た浜辺は人っ子1人いなかったけれど、今日はパラパラと人が集まっていて。

あー、しばらく来ないうちに見つかっちゃったんだなぁなんて少し残念に思ったりして。

それでも、そこから見る花火の美しさはあの時となにも変わっていなかった。



夜空にたくさんの色の大輪の花が咲く。

夜の海が鏡合わせにそれらを映し出す。

チラリと隣を盗み見ると、零ちゃんのビー玉みたいな瞳にも消えゆく火花が映り込んでいる。


もうはぐれる心配なんて必要ないのに繋いだままの手を、キュッと強く握り直した。

気づいた零ちゃんがゆっくりとこっちを向く。


波が寄せる音、花火が爆ぜる音。

全部全部、はっきり聞こえていた。


空に向けていたはずの視線をお互いに絡める。

零ちゃんの目が細められた瞬間、いや、多分もっとずっと前から。何をするのかはわかっていた。



『…零ちゃん、人が、』

「……誰も見てないよ」


低い声で囁かれたら、もう何も言えない。

触れただけの唇は何故だか蜂蜜みたいに甘ったるくて、優しくて。

海風が傍をすり抜ける。

開いては散っていく花火が私たちを照らす。


唇が離れて、それでもしばらく見つめあって、やがて零ちゃんは小さく微笑んだ。

その顔があんまり綺麗で、幸せそうで、つられて私も笑ってしまう。



一段と大きな音が連鎖して、再び明るい夜空を見上げた。

どうやらフィナーレのようだ。

雨みたいに降ってくる花弁たちが重なり合って、ほう…とため息が漏れる。



「…来年」

『え?』

「来年、また一緒に来ような」

『…うん』


1年後の約束だなんて気が早いなぁ、とは思わなかった。

嬉しくて、胸がぽかぽかして、私はにやけてしまいそうな口元を必死に抑えて、最後に咲いた華を見届けたのだった。

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設定タグ:名探偵コナン , 降谷零 , 安室透   
作品ジャンル:恋愛
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ふゆーれい(プロフ) - に、ニヤニヤが全くとまりませんでした…。あと隣の子から預かってた手紙を零に渡す所が何か辛かった()面白かったです!今更ですが、完結おめでとうございます! (2022年7月25日 22時) (レス) @page42 id: 5fc4c4d6bd (このIDを非表示/違反報告)
はろーきてぃ様。 - めっちゃ面白かったです!!さいこおお!がんばれえええ! (2022年5月27日 23時) (レス) @page42 id: 278a10c8d3 (このIDを非表示/違反報告)
よる - 告白しようとした美少女の性格が好きすぎる…めっちゃカッコいいから振られたとしても堂々としてそうだなぁ (2021年4月17日 13時) (レス) id: 6e0ab3a00d (このIDを非表示/違反報告)
mami - 完結お疲れ様です!凄く面白かったです! (2019年8月5日 5時) (レス) id: 3ba7cafabb (このIDを非表示/違反報告)
盛りそば。 - なにこれ……萌しかないじゃないですか…尊死(( (2019年7月21日 15時) (レス) id: 2b295a992e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:立夏 | 作成日時:2018年6月15日 21時

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