lesson 01 ページ2
「ハニトラってわかる?」
幼馴染が急にそんなことを言い出したのは、いつものように私の部屋で勉強していたある日のことだった。
高校に入って急に難しくなった数学の問題がわからなくて、集中も切れてきたそんな時。
随分前から諦めモードだった私は、隣でスラスラ問題を解く彼の言葉に顔を上げた。
『はにとら?』
「うん、ハニートラップ」
『あ、わかるわかる。色仕掛けでしょ?』
それならこの間ドラマで見た。
色気のすごいおねーさんが男の人から巧みに情報を引き出すやつね。
勉強はおしまいと言わんばかりにシャーペンを置いて零ちゃんに向き直る。
すると零ちゃんの方も、ペンを置いてこっちを向いた。
「そ、色仕掛け。
警察官になったら、部署によってはそういうのも仕事のうちだったりするのかなって」
『え?零ちゃんが男の人に色仕掛け…?』
「なんでだよ。男から女にするときもハニートラップっていうからな」
『ほぇ、そうなんだ』
降谷零。
家が隣の幼馴染。
私と同じ高校1年生。
彼の将来の夢は、日本を守る警察官である。
この年になっても未来のことなんて全く考えられない私は、小さい頃からずっと夢を貫いてる零ちゃんを素直に尊敬している。
その夢が叶えばいいなって、隣でいつも思ってた。
氷が溶けきった麦茶を一口飲む。
…今日の零ちゃん、なんだか顔赤くないかな?
暑いのかな、と思って扇風機を付けながら話を続ける。
『零ちゃんはイケメンだから、はにーとらっぷも楽勝だね』
「うーん…でも、いざやらなきゃいけなくなった時のために色々上手くなっとくべきかなって」
『色々?』
聞き返せば、零ちゃんは言いづらそうにちょっと口ごもった。
元々少し紅色だった頬がまた赤くなる。
「…ほら、キスとか」
『へ?』
小さい声で放たれた言葉に首を傾げた。
キス?なんで………あぁ、そっか。
色仕掛けならそういうの上手くないとダメなのか。
ぼんやりとだが納得する。
そんな私に、零ちゃんは更に言いにくそうに、目線を泳がせながら言った。
「だからその、えっと…
Aに付き合ってほしくて…」
『ん?なにに?』
「…………キスの、練習?」
『へ』
思わず目をまん丸にする。
扇風機のスイッチをいじったまま固まる。
………どういう意味だろう。
私がそれを理解できないまま、零ちゃんはグッと近づいてきて。
「キス……してみても、いい…?」
真っ赤な顔で、そう言ったのだ。
3291人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ふゆーれい(プロフ) - に、ニヤニヤが全くとまりませんでした…。あと隣の子から預かってた手紙を零に渡す所が何か辛かった()面白かったです!今更ですが、完結おめでとうございます! (2022年7月25日 22時) (レス) @page42 id: 5fc4c4d6bd (このIDを非表示/違反報告)
はろーきてぃ様。 - めっちゃ面白かったです!!さいこおお!がんばれえええ! (2022年5月27日 23時) (レス) @page42 id: 278a10c8d3 (このIDを非表示/違反報告)
よる - 告白しようとした美少女の性格が好きすぎる…めっちゃカッコいいから振られたとしても堂々としてそうだなぁ (2021年4月17日 13時) (レス) id: 6e0ab3a00d (このIDを非表示/違反報告)
mami - 完結お疲れ様です!凄く面白かったです! (2019年8月5日 5時) (レス) id: 3ba7cafabb (このIDを非表示/違反報告)
盛りそば。 - なにこれ……萌しかないじゃないですか…尊死(( (2019年7月21日 15時) (レス) id: 2b295a992e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:立夏 | 作成日時:2018年6月15日 21時