降谷さんが狂犬と付き合い始めたらしい。【降谷零/安室透】

35話 ページ37

騒然となったポアロの店内。

女子高生たちがキャーキャー騒ぐ中、１人だけが別の理由で目を瞬かせていた。


｢犬飼Aさん？じゃあ犬井犬子って…｣

『あ…っそれについては本当にごめんなさい！！』


ほんっとに申し訳ないです即興とはいえ私がアホすぎる偽名にしてしまったせいで…！

首を傾げる蘭さんにその場で考えた言い訳を並べた。


『えーっと…なんていうか、そう！
ギャグのつもりだったっていうか！？ちょっとした冗談っていうか！ツッコミ待ちだったていうか！
本当すみませんでした！！』

｢そ、そうそう！Aさん結構お茶目なとこあるからな！｣


横から新一くんが謎のフォローを入れてくれる。

頭を下げた私に、蘭さんは慌てて手を振った。


｢そうだったんですか！？ごめんなさい私ったら全然気づかなくて…！｣

｢あはは、そんな名前出されたら普通は突っ込むよね〜蘭は純粋すぎ！｣


園子さんがそう言って笑う。

な、なんとか誤魔化せた！良い方々でよかった…！

隣で新一くんと降谷さんがホッと一息つくのが見えた。心配かけて申し訳ない。


と、そこにお待ちかねのカラスミパスタが運ばれてきた。

うわぁいい匂いする！梓さんにお礼を言って手を合わせる。

しかし食べる前に降谷さんから声をかけられた。



｢すみませんAさん、そこのフォーク取ってもらっていいですか？｣

『わん！』

｢｢え、わん？｣｣

『間違えましたぁ！！！
はいどうぞ安室さん！！！！』


あっっっぶな！！！！

やっぱり気を抜いたらダメだね！？ついいつもの癖が出ちゃう！！

同時に首を傾げた園子さんと蘭さんは不思議そうにしている。

降谷さんと新一くんの表情には再び緊張が走った。

新一くんとか全然関係ないのに無駄にハラハラさせちゃってほんとごめんね…


気を取り直してパスタをフォークに巻き付ける。

パクッと口に入れた。

…え！美味しい！すごい！カラスミなんてあんまり食べたことないけどこんなに美味しいんだ！

あんまり美味しいからつい周りを忘れて頬張り続ける。

そんなだから周りの視線がまた自分に向いてることに気づくのに時間がかかった。


｢…Aさんって、すごく美味しそうに食べますね？｣

『へ？』

｢ほんと！考えてること丸わかり！｣

｢ですよね、僕の作った料理もすごく美味しそうに食べてくれるんですよ｣

｢わ！惚気だ！｣


…え、また私の話になってる？

とりあえずこれ以上ボロを出さないように微笑んでおいた。

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