降谷さんが狂犬と付き合い始めたらしい。【降谷零/安室透】

27話 ページ29

｢遅い｣

『うっそだあ！！！私バイト先からここまで本気でダッシュしてきたんですよ！？』


いくら私でも結構しんどかったのに！！

それなのに目の前の降谷さんは相変わらず鬼。

私は息を整えながら汗で額に張り付いた前髪をよけた。


｢大体とっくにバイト終わってたはずだろ、なにやってんだ？｣

『新一くんが来てたんですよ〜』

｢新一くん？｣

『はい、たまたま来店してて。お喋りしてました！』

｢堂々とサボり報告とは偉くなったもんだな｣

『え！？そんなつもりじゃ…っいひゃいいひゃい！ごめんなひゃい！！』


ギリギリとほっぺたを抓られる。

え！？そこまで怒ることなくないですか！？

ちょっと知り合いが来たからお喋りしてただけなのに！

そんな私の思考を読んだかのように、降谷さんじとっと私を睨んで言った。


｢お前、今夜は例のとこ調べに行くから早く戻って来いって言ったの忘れてたろ｣

『え？そんなこと言ってましたっけ？』

｢………｣

『いったああ！！ごめんなさいごめんなさい！！』


躊躇なく足を踏まれた。

いいじゃないですか！まだまだ時間余裕あるのに！


｢よくない。お前はもうちょっと時間にゆとりを持って行動しろ｣

『はい…あれ？私今声に出して言ってました？』

｢Aの考えてることくらい顔見たらわかる｣

『うそ！？』


私そこまでわかりやすいの…！？

思わず自分の頬を抑える。

そんな私を前に降谷さんはため息をついた。


｢ほら、わかったら行くぞ｣

『はい！』


ピシッといつものように敬礼して答える。

しかし降谷さんはそれを見て少し顔を歪めた。

なんだろう。なにか問題あったかな。

彼はキョトンとしている私に近づいてくる。

そして私の手をいきなり掴んだ。


｢前から思ってたけど、お前の敬礼はなってないんだよな。まず親指を見せてるとこから間違ってる。
警察学校で習わなかったのか？｣

『えっ』


け、敬礼…？そういえば習ったけどいつも特に気にしてなかったな…

降谷さんはそのまま私の手を弄りながら続ける。


｢ここはこうして、もうちょっと肘上げろ。警察官の基本だろ｣

『は、はい！』


せっかく説明してくれてるのに中身は半分以上頭に入ってこなかった。

だ、だってなんか…降谷さんの触り方が、いつもと違うっていうか、その…

なにかがおかしくて顔に熱が集まる。

けれどその直後、上から笑いを堪えるような声が聞こえた。


『降谷さん！？！？わざとやってるでしょ！！』

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