38.花葉色 ページ40
ふと前髪を触られる感覚に目を覚ました。
『あ』と小さい声が前から聞こえ、うっすらと目を開ける。
…あれ?俺いつ寝たっけ。
あー、そうだ。あれから家に着いて、買い物行ってきますからちゃんと寝てて下さいよ!ってAに言われたんだ。
久しぶりに随分ぐっすり寝れた気がする。
ここのところよく眠れていなかったのに、やっぱり発熱するまで追い込まれると寝れるもんなんだな。
なんて考えているうちに、頭も冴えてきて視界もはっきりしてきた。
目の焦点がやっと合う。
と、そこでようやく気がついた。
自分がなにかを抱きしめたまま寝ていたことに。
腕の中にいるのはさっきの小さな声の主。
距離が近くて、白い肌が真っ赤に染まりきっているのがはっきり見える。
彼女は…Aは。そのまま『おはようございます』とだけ言って気まずそうに目を逸らした。
「…………え?」
え?は?なんだこの状況。
なんでこいつが俺の布団の中にいる?
あれ?買い物行くって言ってたよな?もう帰ってきたのか?
いや、そもそも俺どれくらい寝てたんだ。
いつからこの状態になってた?
…ダメだ、何も思い出せない。
混乱したまま固まった俺を、Aはじとっと睨みあげる。
『言っときますけど、無理矢理引きずりこんできたのは降谷さんですからね?』
「………まじで?」
『覚えてないんですか!?』
「いや…うん…まったく……」
Aが信じられないと言いたげな表情を浮かべた。
まじで覚えてない。Aが帰ってきたことも記憶にない。
『帰ってきたら降谷さんが寝てて、おでこに手当たら寝ぼけた降谷さんに引きずりこまれて抱き枕にされたんです!!
なんで寝ぼけてる癖にあんなに力強いんですか!?
割と本気で逃げようとしたのにビクともしなかったです!』
「そ、そうか…悪かったな…」
本当に悪かったなそれは…
ふくれっ面なAに胸板を押されて慌てて腕を離す。
Aが布団から這い出るのと同時に体を起こせば、部屋に夕日が差し込んでいた。
うわ…もう夕方か、結構寝たな…
もう体調も大分回復したようで、頭もスッキリしていた。
…よく考えたら俺、本庁でも車内でも変なこと口走りまくってたな?
可愛いとか本人の前で2回も言ってしまった。
どうせ本気だとは思われてないだろうけど。
『降谷さーん、エプロン借りますねー』
「ああ」
ぶかぶかすぎるエプロンを着て台所に立つAの後ろ姿を、目に焼き付けた。
2778人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
如月.夜月(きさらぎ よつき)(プロフ) - 立夏さん» んふふ!良かった!同じですね(*´▽`*) (2021年1月20日 19時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - 如月.夜月(きさらぎ よつき)さん» えっっっっめっちゃいいですねそれ最高ですね!!!??(笑)私もめちゃくちゃ見たいです!!!!!!! (2021年1月20日 2時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - ムースさん» わ〜!そんなにたくさん読んで頂けるなんて本当に嬉しいです!ありがとうございます! (2021年1月20日 2時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
如月.夜月(きさらぎ よつき)(プロフ) - 安室さん(怪我)、狂犬ちゃん(真顔)にお姫様抱っこされてほしいな… (2021年1月17日 13時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
ムース - 3周目です!好きすぎる! (2020年12月12日 21時) (レス) id: 38b2fa8d4e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:立夏 | 作成日時:2018年7月6日 23時