30.紅梅色 ページ32
15分だけ、とデスクに突っ伏して寝ていたある徹夜明けの朝。
珍しくオフィスのざわめきで目が覚めた。
なに騒いでるんだ…?書類に重大なミスでも見つかったのだろうか。
「うそだろ…?」「大丈夫か…?」なんて声を聞きながら目をこすって顔を上げる。
と、すぐに恒例のやかましいモーニングコールが飛んできた。
『あ!降谷さーーん!!!おはようございまーす!!』
「うるっせえ…」
俺が寝てるうちに出社してたのか…
キーンと頭に響いた声の主は、少し離れたところでぶんぶん手を振っている。
その周りを、何人もの捜査官が囲んでいた。
なんだ、あいつまた何かやらかしたか?
眉をひそめながらそこへ近づく。
そしてAと共に囲まれている机を覗き込んだ。
「…え?」
しかし、広がっていた光景は予想の斜め上をいくものだった。
並べられていたのは様々な料理が敷き詰められた重箱。
色とりどりのおかずと綺麗に握られたおにぎり。
どう見ても手作り。だがこのクオリティはすごい。
誰かの腹が鳴る音が聞こえた。
「……なにこれ?」
隣にいた風見に聞く。
俺はこんなの持ってきてないぞ。
風見はメガネを上げ、少し目を逸らして答えた。
「犬飼が作ってきたそうです」
「は?うそつけ」
『ほんとですよ!もう!なんで皆さん信じてくれないんですか!?』
隣でAが暴れる。
いやいやいや絶対嘘だろ。
このポンコツが?これを?自分で作っただと?
信じられるわけがない。
『降谷さん忘れたんですか!?
お前は茶を入れるのだけはうまいって前に褒めてくれたじゃないですか!』
「あー…そういえば…」
そうなのだ。
この犬が入れる茶は何故か無駄にうまい。
コーヒーだろうが紅茶だろうが緑茶だろうが、こいつが入れるとめちゃくちゃうまいのだ。
それは確かにそうだ。でもだからって料理まで出来るなんて聞いてないぞ。
『今日は皆さん徹夜だったでしょう。
私だけ帰らせてもらって申し訳なくて…せっかくだからお弁当作っていこうって思ったんです!』
それなのに誰も信じてくれないんだから!と頬を膨らませるA。
風見が隣で困ったように眉を下げた。
「さっきからずっとこう言ってるんで、ひとまず信じることにしたんですけど、誰が最初に食べるかって話になって…」
「あぁ…」
『そんな毒見みたいなことしなくても大丈夫ですぅ!』
もう耐えきれないと言いたげに、Aはその場にあった割り箸を掴んだ。
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如月.夜月(きさらぎ よつき)(プロフ) - 立夏さん» んふふ!良かった!同じですね(*´▽`*) (2021年1月20日 19時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - 如月.夜月(きさらぎ よつき)さん» えっっっっめっちゃいいですねそれ最高ですね!!!??(笑)私もめちゃくちゃ見たいです!!!!!!! (2021年1月20日 2時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - ムースさん» わ〜!そんなにたくさん読んで頂けるなんて本当に嬉しいです!ありがとうございます! (2021年1月20日 2時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
如月.夜月(きさらぎ よつき)(プロフ) - 安室さん(怪我)、狂犬ちゃん(真顔)にお姫様抱っこされてほしいな… (2021年1月17日 13時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
ムース - 3周目です!好きすぎる! (2020年12月12日 21時) (レス) id: 38b2fa8d4e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2018年7月6日 23時