22.朱華色 ページ24
席についてからも、Aはいつも通りうるさい。
他作品の予告が流れることを知らなかったようで、『え、プリキュア始まりましたけど!?』とかわーわー騒いでいた。
恥ずかしいからまじでやめてほしい。
『この女の人可愛いですね』
予告を見ながらそう言う彼女に、俺は今日何度目かわからない驚きの目を向けた。
「…沖野ヨーコ知らないのか?」
『え?有名な方なんですか?』
「……超人気アイドル」
『へぇ〜』
まじかよ。こいつ牢屋で生活でもしてんのか。
前からこんなことは何度かあったが、流石に沖野ヨーコまで知らないとは。
かわい〜なんて言いながらレモンティーを飲んでいたAは、隣の席に座った老夫婦に小さく会釈をする。
すると、その老婦人が俺をチラリと見てAに笑いかけた。
「今夜は若いお二人でデートかしら?」
『でっ…!?』
「……あー」
俺もからかおうか迷って結局やめた単語だ。
案の定Aはその言葉にぶわっと耳まで紅く染める。
いつまで経ってもこういう系統の話題には慣れないらしい。
彼女はわたわた手を振り慌てて否定した。
『違いますよ!この人は私の飼いぬ………上司です!!』
…お前いま飼い主って言おうとしただろ。
しかし老婦人はさして気に止めた様子もなく微笑みながら答える。
「あら、そうなのね。私達はデートよ。今日は結婚記念日なの」
『そうなんですか!おめでとうございます!』
へえ…仲の良さそうな老夫婦だ。
気品があって、ニコニコしていて、本当に幸せそうだ。
…ってちょっと待て。
これから始まるのホラー映画だぞ。
絶対間違えてるだろ、こんな優しげな老夫婦がこの血みどろ映画を見るわけない。
「あの…失礼ですがスクリーン間違えておられませんか?」
俺の質問にようやくAも気づいたようで、あっと声を上げた。
しかし婦人は柔らかい笑顔を崩さずに首を振る。
「大丈夫、間違えてないわよ」
『えっ本当に大丈夫ですか?心臓止めないでくださいよ?』
「うわ、バカ」
デリカシーのなさすぎるAの発言に思わず明るい茶色の頭を叩いた。
そんな俺達にも彼女は笑みを崩さず答える。
「ええ。私達ホラー映画が大好きなの」
『アッそうでしたか…』
…ひ、人は見かけによらないな。
いや、元気そうでなによりだが。
ちょうどその時、照明が消えた。
暗闇の中で『絶対叫びませんからね』と小さく聞こえて、少し笑ってしまった。
2779人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
如月.夜月(きさらぎ よつき)(プロフ) - 立夏さん» んふふ!良かった!同じですね(*´▽`*) (2021年1月20日 19時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - 如月.夜月(きさらぎ よつき)さん» えっっっっめっちゃいいですねそれ最高ですね!!!??(笑)私もめちゃくちゃ見たいです!!!!!!! (2021年1月20日 2時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - ムースさん» わ〜!そんなにたくさん読んで頂けるなんて本当に嬉しいです!ありがとうございます! (2021年1月20日 2時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
如月.夜月(きさらぎ よつき)(プロフ) - 安室さん(怪我)、狂犬ちゃん(真顔)にお姫様抱っこされてほしいな… (2021年1月17日 13時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
ムース - 3周目です!好きすぎる! (2020年12月12日 21時) (レス) id: 38b2fa8d4e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:立夏 | 作成日時:2018年7月6日 23時