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35.長春色 ページ37

「つかれた…」


誰もいないエレベーターの中で呟いた。

今は会議の帰り。

思ったより難航して本当に疲れた。


鏡に写った自分を見れば、隠しきれていない隈が見える。

まずいな…寝不足が祟って体が重い。

そろそろちゃんと寝ないとな…


そう思いながら、音を立てて目的の階に着いたエレベーターを降りる。

そこからオフィスまで歩くと、壁の向こうからひょこっと犬が顔を出した。



『あ、降谷さん!おかえりなさい!お疲れ様でした!!』

「ああ」


ぴんと立った耳に上機嫌な尻尾。

……おかしいな、なんか今日は幻覚がすごいはっきり見える。

触れられるんじゃないかと思って手を伸ばしたが、当然空を切った。


Aはそんな俺を前に、クエスチョンマークを浮かべながらもニッコリ笑う。

…んん?今こいつの周りに花が舞ったような気がしたんだが…

顎に手を当てて目の前のAをまじまじと見つめる。

不思議そうにしているものの動かないAに、気づけばその言葉を発していた。



「なんかお前今日かわいいな?」

『…………へ?』


Aがピタリと停止する。

…え、俺今そんな大層なこと言ったか?

彼女の顔はみるみるうちに真っ赤に染まっていく。

やっぱり可愛いな、と思いながら眺めていたが、しかしそれは一瞬で終わってしまった。

Aがなにかに気づいたように動きを止め、その瞬間スッと頬から赤みが引いたのだ。


さっきの赤くなった表情から一転、訝しげに眉を寄せたAは、じっと俺の顔を見つめる。

そしてゆっくりと口を開いた。



『……降谷さん』

「なんだ」


『…熱あります?』


「…………えっ?」



熱?

確かに少しだるいけど、別に熱なんて…

そう口にする前に、Aが俺の額に触れる。

そして触れた瞬間、バッと大げさに手を引いた。


『あっっつ!!!?
風見さん!風見さーーーん!!降谷さんが熱出しましたーー!!!』

「え!?」


慌てて風見が駆けてくる足音がする。

そんな大袈裟だな。熱くらいで。


「どうせ大した熱じゃないだろ」

『そんなことないですって!相当熱いですよ!?
ほら測ってください!』

「むぐ」


風見が持ってきた体温計を問答無用で口に突っ込まれた。

少しして、ピピッと無機質な電子音が鳴る。

Aが強引にそれを抜き取って数字を確認し、目を剥いた。


『39℃超えてるじゃないですか!!!バカ!!』

「あ?お前今バカって言ったか?」

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設定タグ:名探偵コナン , 降谷零 , 安室透   
作品ジャンル:恋愛
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如月.夜月(きさらぎ よつき)(プロフ) - 立夏さん» んふふ!良かった!同じですね(*´▽`*) (2021年1月20日 19時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - 如月.夜月(きさらぎ よつき)さん» えっっっっめっちゃいいですねそれ最高ですね!!!??(笑)私もめちゃくちゃ見たいです!!!!!!! (2021年1月20日 2時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - ムースさん» わ〜!そんなにたくさん読んで頂けるなんて本当に嬉しいです!ありがとうございます! (2021年1月20日 2時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
如月.夜月(きさらぎ よつき)(プロフ) - 安室さん(怪我)、狂犬ちゃん(真顔)にお姫様抱っこされてほしいな… (2021年1月17日 13時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
ムース - 3周目です!好きすぎる! (2020年12月12日 21時) (レス) id: 38b2fa8d4e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:立夏 | 作成日時:2018年7月6日 23時

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