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03.縹色 ページ4

想像以上だった。

以上なんてもんじゃない。遥かに超えていた。



人気のないの工場地帯のビルの1つ。

とあるテロ組織のアジトへの突入作戦当日。

上手くいっている、とは言い難い状況だった。


銃撃戦になってしまったのだ。

目の前を弾丸が掠める。
金属と金属がぶつかる音が響く。

元々大人数を引き連れていたわけではないが、先頭の俺に今もついてこられている奴はそこまで多くなかった。



その中に、犬飼Aがまだ残っているのだ。

新人なんだから無理だと感じたらすぐに引けと言い聞かせていた。

しかし奴は息ひとつ乱さず、いつもの腹立つ顔を崩さず、涼しい顔で付いてきている。

犬っころのようにすばしっこく転がり回り、さらには敵を何人も戦闘不能にさせていた。



「犬飼…お前、一体なんなんだよ」



敵がいなくなった廊下を走りながら、隣の彼女にそう零してしまったのは仕方ないだろう。

優秀な新人は何人も見てきた。

でもここまでの奴は流石に初めてだ。

規格外すぎる。ふざけてる。

俺の言葉に犬飼はキョトンとし、きゅーっと眉を寄せた。



『もう!Aって呼んで下さいって何度も言ってるじゃないですか!』

「言ってる場合か!」


そんな会話をしながらも、敵の肩を正確に撃ち抜く。

階段を上りきり、壁の影に身を隠した。



『じゃあ降谷さん、今回の件がうまく終わったら、下の名前で呼んでくれますか?』

「…なんでそこまでこだわるんだよ」

『うーん……苗字、あんまり好きじゃないんですよね〜』


なんで、と聞こうとして口を噤む。

犬飼は笑いながらも、なんとなくこれ以上は聞くなという雰囲気を出していた。

…確かに苗字が好きじゃないなんて、場合によってはかなり踏み込んだ話になるか。



「…お前の頑張り次第だな」

『まじですか!?やったー頑張ります!』

「声がでかい」



ふぅ…と息をつく。

見たところこの階は人がいない。

周りの部下に目配せして頷いた。

地面を蹴って影から飛び出す。


しかし次の瞬間だった。



『降谷さん!ダメです!!』


初めてあの犬飼の焦った声を聞いた。

続いて耳を劈くうるさい発砲音。

誰かに強く押し倒された。

それがあの小さな犬と気づくのに時間はかからなかった。



「───A!!」


意図せずその名が口から飛び出したことを、気にしている余裕はなかった。

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設定タグ:名探偵コナン , 降谷零 , 安室透   
作品ジャンル:恋愛
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如月.夜月(きさらぎ よつき)(プロフ) - 立夏さん» んふふ!良かった!同じですね(*´▽`*) (2021年1月20日 19時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - 如月.夜月(きさらぎ よつき)さん» えっっっっめっちゃいいですねそれ最高ですね!!!??(笑)私もめちゃくちゃ見たいです!!!!!!! (2021年1月20日 2時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - ムースさん» わ〜!そんなにたくさん読んで頂けるなんて本当に嬉しいです!ありがとうございます! (2021年1月20日 2時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
如月.夜月(きさらぎ よつき)(プロフ) - 安室さん(怪我)、狂犬ちゃん(真顔)にお姫様抱っこされてほしいな… (2021年1月17日 13時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
ムース - 3周目です!好きすぎる! (2020年12月12日 21時) (レス) id: 38b2fa8d4e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:立夏 | 作成日時:2018年7月6日 23時

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