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24.翡翠色 ページ26

エントランスに戻ってからAを椅子に下ろす。

そのまま彼女の手首を掴んだ。

不思議そうに首を傾げたAは、それには特に触れず顔を上げる。


『それで、なんですか?罰ゲームって』

「あー…いや、罰ゲームって感じじゃないんだけど…」


トン、トン、と規則正しい鼓動が手に伝わる。


「1個だけ、質問に答えろ」

『え?』


意外そうにキョトンとするA。

少し前から、たまに感じていたことがあった。

気のせいだとは思う。

それでも一応、確かめておきたかった。


脈を測られていることには気づいているだろう。

Aの表情に少し緊張が走った。

いや…そんな大層なこと聞くわけじゃないんだけど…



「お前、俺とどこかで会ったことあるか?」

『……へ?』

「公安で出会う前に、だ」


何度か、Aの姿が誰かと被って見えることがあった。

それが誰かはわからない。

けれどずっと気になっていたのだ。

もしかしたらどこかで会ったことがあるのでは、と。


俺の言葉に、Aはギクリと固まった。

大きな瞳が見開かれる。

急に鼓動がぶれた。


……え?なんだよその反応。

嘘だろ、ほんとに?

本当に会ったことあるのか?

この既視感の正体なんて、どうせどこぞの犬だろうと思っていたのに。



「……A、」


一体どこで、と言おうとした声は、とんちんかんすぎる彼女の言葉で遮られた。



『な、ナンパですか!?このタイミングで…!?』

「…………はぁ?」


思わず低い声が出た。

何言ってんだこいつ。

思いっきり眉を寄せた俺に気付かず、Aは何故か嬉しそうに続ける。


『え、だってそれナンパの常套句じゃないんですか?きゃー!初めて言われましたー!』

「アホか」


まじでアホだ。

アホすぎてこっちが馬鹿らしくなってきた。


会ったことないな。

絶対会ったことない。

こんなアホ、1度会ったら忘れない。

既視感の正体は、どうせポアロに来てた小学生かそのへんで見た犬に決まってる。


キャーキャー騒いでるAにデコピンを食らわせる。

呻きながら額を抑えた彼女は、涙目のまま笑って言った。


『あの時が初対面だと思いますよ、降谷さんみたいな人、1度会ったら忘れません』

「そうだな、俺も同意見だ」


脈はぶれない。

はぁ…とため息をつく。

今ので何故かめちゃくちゃ疲れた。


しかしこういう時ほど嫌なことが重なるのがこの世界で。

次の瞬間、館内に非常用のベルが鳴り響いた。

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設定タグ:名探偵コナン , 降谷零 , 安室透   
作品ジャンル:恋愛
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如月.夜月(きさらぎ よつき)(プロフ) - 立夏さん» んふふ!良かった!同じですね(*´▽`*) (2021年1月20日 19時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - 如月.夜月(きさらぎ よつき)さん» えっっっっめっちゃいいですねそれ最高ですね!!!??(笑)私もめちゃくちゃ見たいです!!!!!!! (2021年1月20日 2時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - ムースさん» わ〜!そんなにたくさん読んで頂けるなんて本当に嬉しいです!ありがとうございます! (2021年1月20日 2時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
如月.夜月(きさらぎ よつき)(プロフ) - 安室さん(怪我)、狂犬ちゃん(真顔)にお姫様抱っこされてほしいな… (2021年1月17日 13時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
ムース - 3周目です!好きすぎる! (2020年12月12日 21時) (レス) id: 38b2fa8d4e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:立夏 | 作成日時:2018年7月6日 23時

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