降谷さんが狂犬と付き合い始めたらしい。２【降谷零/安室透】

47話 ページ4

降谷side


喧嘩してるとはいえ、Aが家出してるとはいえ、お互い仕事を休むわけにはいかない。

勤め先が同じだから否が応でも顔を合わすことになる。

というか俺とAはほぼ一緒に行動するから常に隣にいるのだ。


いつもはうるさいAも今日は喋らないかもな、と思いながらオフィスに入る。

しかしその瞬間、聞きなれた大音量の声が飛んできた。


『あ！降谷さん！！おはようございますー！！』

｢……え？｣


思わず耳を疑った。

ついに幻聴が聞こえたか、Aに出ていかれたのがそこまでこたえてたか、とまで思ってしまった。

だってあれだけ怒って出ていったのに、こんな元気に朝の挨拶なんて。


けれど声のした方を向けば、Aは間違いなくいつものようにニコニコ笑顔で手を振っている。

…幻覚か？

そう思いながら目を擦る。

と、Aは急にハッとして手を引っ込めた。


『あっ間違えた！いま喧嘩してるんだった！！今のなし！忘れて下さい！！』

｢……｣


…幻聴でも幻覚でもなくただこいつがアホなだけだったらしい。

Aは誤魔化すように『資料取ってきます！』と走って出ていく。

その背中を見ながら俺もデスクに座る。

そんな時、ようやく先程から自分に多数の視線が突き刺さっていることに気がついた。


｢…降谷さん、Aちゃんと喧嘩したんですか？｣

｢え｣


隣のデスクの部下が俺にそう聞いた。

周りの部下達の目が異様に痛い。

…あれは喧嘩と呼べるのだろうか。

そう思いはしたものの、俺は｢まあな｣と頷く。

すると一気に批判の嵐が飛んできた。


｢え！？あの降谷さんとAちゃんが喧嘩！？｣

｢降谷さん一体なに言ったんですか！？｣

｢ダメですよ降谷さんちゃんと謝らなきゃ！｣

｢そうですよ！謝るなら早いうちじゃないと！｣

｢は！？待て待て待てなんでなにも言ってないのに俺が悪いの前提で話が進んでるんだ！？｣


俺が慌ててそう返せば、周りは何を言ってるんだと言いたげな顔をする。


｢どんなときも従順なあのAちゃんが怒るってことは降谷さんが原因としか考えられないでしょう！｣


…いや確かに当たってはいるけど！

今回悪いのは100%俺だけど！こいつら１つも事情知らないくせに！


｢なんだよ俺の味方はいないのかよ！｣

｢公安は全員Aちゃんの味方ですよ｣


あいつ好かれすぎだろ！！

その直後、Aが資料を持って帰ってきたため、全員何事もなかったかのように仕事に戻った。

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