降谷さんが狂犬を飼い始めたらしい。２【降谷零/安室透】

53.紅葉色 ページ13

『ふっるやさーーん！！！
おはようございますーー！！いい朝ですねーー！！』


いつも通りのモーニングコールをかましてきたAに、力なく顔を上げた。

ほんっとにいつでも元気だなこいつは…

そう思いながら適当に返事をする。


｢あぁ…おはよ…｣

『えぇぇ！？』


と、Aはパタパタ走ってきていた足をいきなり止め、驚愕に満ちた表情をした。


『あ、朝の挨拶に“うるさい”以外の言葉が返ってきたのは初めてです…！
降谷さん、なにか変なものでも食べました…！？』

｢そう思うならやめてくれないか。疲れてんだよ｣


普通にもういちいち言うのが面倒になっただけだ。

前から思ってたがこいつスタミナおかしいんじゃないのか。

俺の言葉に、Aはまじまじと顔を見つめてくる。

そしてきゅっと眉を寄せた。



『あー！さてはまた徹夜しましたね！？
もう！この前熱出したばっかりなのに！』

｢だから今から仮眠室行こうと思ってたんだよ｣

『そうだったんですね！では少ししたら起こしに行きましょうか？』

｢やめてくれ…お前のうるさい声で目覚めたくない…｣

『じゃあ無言で起こします！』

｢おい待てその拳はなんだ。まさか暴力で起こす気じゃないだろうな｣


お前のグーパンとかまじでしゃれにならない。

下手したら骨が折れる。

冗談ですよ！とへらへら笑うA。

いや今のは絶対本気で言ってた。こっわ。


小さくため息をついて、椅子から立ち上がる。

そして側にあった紙をAの額に押し付けた。

明日はAが潜入してた宗教団体に突入する。

そのアジトの地図だ。



｢明日までにちゃんと覚えとけよ｣

『え？私しょっちゅうここに行ってるんですから覚えてますよ？』

｢…ほんとのほんとに覚えてるんだな？｣

『覚えてますよう！それくらいの記憶力はあります！』

｢明日になって“降谷さんここどこですか！？”とか言うなよ？｣

『言いませんって！降谷さん私のことなめすぎです！』


実際へっぽこなんだから仕方ないだろ。

敷地も割と広いし。

…ま、でも流石にこれくらいはわかるか。

結局潜入も最後までバレなかったもんな。

そりゃ向こうもこんなチビなバカを警察官だとは思わないだろうけど。


ぶんぶんと手を振っているバカ犬に背を向ける。

疲れてはいるが目は冴えてる。

横になっても寝れそうにないな、と思いながらも仮眠室に向かった。

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