45.瑠璃色 ページ5
次会えるのはいつになるだろうか、なんて考えていたが、シャトーはその数日後にひょっこり現れた。
そしてそれからは定期的に俺のところに来て、少しだけ話して帰るようになった。
「やっほーお兄さん!」
なんて言いながら毎回の如く塀の上から飛び降りてくるシャトー。
何を話すのかと思えば、とりとめもない話ばかり。
今日は暑くてやってられないだの、もうちょっと身長が欲しいのに成長が止まっただの。
本当に暇潰しなのかと思うくらいどうでもいいような内容。
そんなんだから、思わず警戒を解きそうになることも何度もあった。
シャトーの方も随分打ち解けてきたようで、最初に会った時と比べてかなり幼い年相応の反応を見せるようになってきた。
いつの間にか彼女と話すのを楽しみにしてしまっている自分がいる。
真っ黒な組織の中で、それだけが唯一楽しいと思える時間で。
緩みかけた緊張の糸を慌てて張り詰める度、彼女は面白そうにクスクス笑う。
「そんなにピリピリしなくたっていいのに。
別にお兄さんに何かしようって気はないよ?」
この子は本当に人のことをよく見てる。
こんなに敏感に感じ取れるだなんて、普段から人に気を使わなければいけない環境にいるのだろうか。
小さく息をついた。
いい加減はっきりさせとこう。俺に話しかけた目的を。
「…なら、どうしてあの日、僕に話しかけてきたんですか?」
単刀直入に聞いた俺に、シャトーは塀に座ったまま首を捻る。
「えー?うーん、単にお話したかったからだよ」
「……暇潰しですか?」
「そうじゃないけど」
即座に否定して、塀から降りて俺の目の前に来た。
そして初めて会った時のように顔を近づける。
「ほら、言ったでしょ?綺麗な目だねって。
どんな人かなって気になったの。
それだけだよ」
…嘘を言ってる感じはない。
表情が見えないから、ちゃんとはわからないけど。
でも確かに、話すことはなんてことないことばかりだし、最初からずっと敵意なんて感じたこともない。
むしろ小さい子に懐かれたような、そんな感覚。
「お兄さんは慎重だね。いいと思うよ、こんな組織だし」
愉快そうに小さく肩を揺らしたシャトーは、また軽々と塀に飛び乗った。
そろそろ時間らしい。
またね、と手を振って向こう側に消えた。
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立夏(プロフ) - あかね。さん» 素敵なお言葉になんてお返しすればいいのかわからないくらい今すごい泣きそうになってます、本当にありがとうございます!実は私も当作品が1番気に入ってまして、今でも楽しんでくださる方がいるなんてとっても嬉しいです!長い間お付き合いありがとうございます!! (2020年4月23日 0時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
あかね。(プロフ) - 何回目か分かりませんが、また読み直してしまいました。立夏さんのお話ほんと好きで、中でも狂犬が1番好きで、犬飼ちゃんと降谷さんがやっと掴んだ幸せに毎回涙します。素敵な作品をいつもありがとうございます! (2020年4月22日 13時) (レス) id: 639a2702b7 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - いるかさん» わぁぁ完結して随分立っているのに見つけてくださってありがとうございます…!本当に嬉しいです!最後まで読んで下さってありがとうございました!! (2019年4月25日 0時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
いるか(プロフ) - 素敵すぎる小説すぎて涙が止まりませんでした。これからも、応援してます(´;Д;`) (2019年4月24日 16時) (レス) id: 8c81b6610f (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - ウツボカズラさん» 伏線褒めてもらえるなんて嬉しいです…!どちらも夢が叶ったハッピーエンドを無事お届け出来て安心しております笑 最後まで本当にありがとうございました!!これからも頑張ります! (2018年8月11日 1時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2018年8月2日 19時