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振り返ればそこには、グレーのスーツを纏った降谷さん。

予想外な来訪に目をぱちぱちと瞬かせた。あれ、今は後処理に追い回されてるはずなのに。


『どうされました?』

「新一くんに呼び出された」

『え?工藤ならさっき…』

「あぁ、すれ違ったよ。特に用事はないらしい」

『…はい?』


矛盾する言葉に首を傾げる。用事がないのに呼び出した?

そこでさっきの工藤の言葉が思い浮かんだ。

…あー、なるほど。要するに話す場所を設けてくれたわけだ。私がいつまで経っても踏み出さないから。

お節介だなぁ、と軽く笑った。柵に背を預けて彼の方を向く。

そして、緩く微笑んで口を開いた。


『大事なところでぶった切ったままでしたよね』

「え」


いきなり本題に入った私に降谷さんは表情を固める。

そんな彼に容赦なく言った。


『降谷さん、私にキスしましたよね』

「………っ、なんのこと」

『えー!?この期に及んで誤魔化すんですか!?』


思わず身を乗り出して眉を寄せる。

まさかそう来るとは思ってなかった!なかったことにする気!?

一歩進んで彼を見上げた。まだ伝えてなかったことがある。


『降谷さん、私はあなたが言うようなものを望んだりはしません』

これは、あの時言おうとして言えなかった言葉だ。


『降谷さんの隣にいたいです。それが私が望む唯一のことです』


別の誰かじゃない。私が好きになったのは降谷さんだ。

言い切った私に彼は口を結ぶ。

風が止んで沈黙が続く。

やがて降谷さんは、小さく息を吐いて言った。


「…後悔するかもしれないぞ」

『しませんよ、絶対』

「もう離してやれないかもしれない」

『はい、願ったりです』

「引き返すなら今のうちだぞ」

『しつこいなぁ、そんなことしませんってば』


何度確かめるんだ。私はもう2回も告白したのに。

降谷さんの瞳がまっすぐに私を射抜く。

もうその碧は揺れてはいなかった。


「A」


大きな手が頬に触れる。淡い群青色の中に私が映る。

降谷さんは、私の大好きな笑顔を浮かべて言った。


「好きだよ」


桜の花びらが風に乗って舞い上がる。

初めて伝えられた言葉に息が止まる。いつの間にか滲んだ涙で視界が揺れた。

それでも、私は笑って彼に返した。


『私も降谷さんが好きです』


春の日差しがミルクティー色の髪を輝かせる。

重なった唇は、何故だか甘い味がした。

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設定タグ:名探偵コナン , 降谷零 , 安室透   
作品ジャンル:恋愛
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(プロフ) - とっっても良い話でした!!最後にお話を更新されてからかなり時間が経っているのでもうログインされていないかもしれませんが、どうしても伝えたくてコメントさせていただきました…!素敵なお話を書いていただきありがとうございました! (7月8日 22時) (レス) @page38 id: 9862219e48 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 2周目です!!本当にいい話、、大好きです。書いてくださり、本当ありがとうございました。 (2022年2月4日 23時) (レス) id: b375adba0d (このIDを非表示/違反報告)
m - 立夏さんのお話、内容がししっかりしてて面白くて…他にも作品書いてるのかなって思ったら過去に読んだ事ある作品ばかりですごい驚きました!全部すごい好きな作品だったので…Twitterのフォロー失礼致します! (2021年8月31日 12時) (レス) id: a52571fa0a (このIDを非表示/違反報告)
りー - 叔母様いい人や!姉さんの事好きだったんやな(´;ω;`) (2021年8月22日 22時) (レス) id: 6d65fc1765 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - 推しが尊いマンさん» わ〜!ありがとうございます!後半すごく悩みながら書いていたので本当に嬉しいです!最後までお付き合い頂きありがとうございました!! (2021年1月20日 2時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:立夏 | 作成日時:2019年4月5日 20時

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