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一瞬にして降谷さんの顔に緊張が走った。
それでも彼は笑みを浮かべて振り返る。この場ではバーボンにならないといけない。
ベルモットが構えた銃口が私たちに向けられている。彼の服の裾を掴めば、黙って抱き寄せられた。
「まさかあなたがこんなことをするなんてね、バーボン」
「…ベルモット」
今更後悔してももう遅い。
せめて余計なことを言わないように口を結ぶ。
「意外ね、あなたそんな子供が好みだったの?」
「あなたの方こそ、女子高生を監 禁する趣味がおありで?」
「違うわよ。吐かせないといけない情報があるの。返してくれるかしら」
彼女の言葉に降谷さんは軽く笑った。
更に強く抱き寄せられて、体が密着する。
「返す?冗談じゃない。この子は僕のものだ」
凍りつきそうな声にベルモットが眉をひそめる。
すると次の瞬間、降谷さんはいきなり想定外の言葉を並べだした。
「この子は元々僕の情報屋ですよ」
…えっ!!?じょうほうや!?
びっくりして顔を上げそうになったのをなんとか堪えた。
いや、え、あ、…う、嘘ではない、か…協力者も似たようなもの、か…?
ベルモットの方もこれは予想していなかったのか、翡翠の目を丸めた。
「ならその子が私たちのことを嗅ぎ回ってたのは…」
「僕の任務に必要だったからです。この子は組織の敵じゃない」
スラスラと嘘を並べる彼は不敵な笑みを絶やさない。
けれど、ベルモットは拳銃のセーフティを外した。
「どうかしらね。その子、自分の親が組織に殺されたことに気づいたわよ。これから私たちを憎むんじゃない?」
「大丈夫ですよ。この子が僕の敵に回ることは万に一つもありえませんから」
虚構と真実が織り交ぜられた言葉は彼女には事実に聞こえるだろう。
「あなたには渡さない」
なにかが滲んだセリフと共に降谷さんの手に力がこめられる。
彼は最後に、ニッコリと笑って付け加えた。
「それに、この子が死ねば蘭さんが泣きますよ」
「………」
多分、その一言が1番効いた。
ベルモットのこめかみがわずかに跳ねた。
綺麗な瞳が閉じられて、眉が寄せられる。
長いため息が零される。
彼女は重たそうに銃口を私たちから外した。
「…あなたが責任持ってICチップの場所を吐かせなさい」
「ええ、わかりました」
降谷さんが私の手を取って歩き出す。
収束した事態に目を白黒させながらその後を追った。
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羽(プロフ) - とっっても良い話でした!!最後にお話を更新されてからかなり時間が経っているのでもうログインされていないかもしれませんが、どうしても伝えたくてコメントさせていただきました…!素敵なお話を書いていただきありがとうございました! (7月8日 22時) (レス) @page38 id: 9862219e48 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 2周目です!!本当にいい話、、大好きです。書いてくださり、本当ありがとうございました。 (2022年2月4日 23時) (レス) id: b375adba0d (このIDを非表示/違反報告)
m - 立夏さんのお話、内容がししっかりしてて面白くて…他にも作品書いてるのかなって思ったら過去に読んだ事ある作品ばかりですごい驚きました!全部すごい好きな作品だったので…Twitterのフォロー失礼致します! (2021年8月31日 12時) (レス) id: a52571fa0a (このIDを非表示/違反報告)
りー - 叔母様いい人や!姉さんの事好きだったんやな(´;ω;`) (2021年8月22日 22時) (レス) id: 6d65fc1765 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - 推しが尊いマンさん» わ〜!ありがとうございます!後半すごく悩みながら書いていたので本当に嬉しいです!最後までお付き合い頂きありがとうございました!! (2021年1月20日 2時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2019年4月5日 20時