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「……え?」
透き通る碧が見開かれた。
いきなりすぎるのはわかってる。それでも今は許して欲しかった。
『ごめんなさい。これで本当に最後にします。
今日を最後にあなたへの想いは全部断ち切ります。
だから…言わせてくれませんか』
これは私のワガママだ。私が気持ちの整理をつけたいからだ。
髪を切ったって諦めるなんてできっこなかった。
けれど、今なら…今もう一度はっきり振られたら、終わらせられる気がした。叶うはずもない初恋を。
不思議と心は凪いでいた。
小さく息を吸う。彼をまっすぐに見つめた。
これが、最後の告白だ。
『降谷さんが好きです』
「……っ」
『叶わないことも見合わないこともわかってます。それでも私はあなたが好きです』
そう言いきって、笑った。
見栄を張ったわけじゃない。この気持ちを伝えるなら、やっぱり笑顔じゃないといけないから。
困らせてしまっているかもしれない。
それでも降谷さんはちゃんと振ってくれる。そういう人だ。わかってるから、今こうして彼の優しさに甘えてるんだ。
彼は俯いて黙り込む。
夜の静けさが部屋の中に広がる。
私はじっと返事を待った。
しかし次の瞬間だった。
降谷さんは私の期待を裏切って、予想もしていなかった行動に出た。
気がついた時には腕を引かれていた。顎を上げられていた。
目を瞬かせる暇もなかった。追いつかない思考は動きを止める。
重なった唇に、キスされていることに、数秒かかってようやく気がついた。
『…!?ふる…っ、ん』
反射的に離れてもまた口を塞がれる。
後頭部を抑えられて、逃げ場もないまま息を止めた。
長く感じたけれど、きっと実際はそんなことはなかったんだろう。
やがて離れた降谷さんは私を見つめて、抱きしめた。
「…バカだな」
『ふるや、さん…?』
「俺なんかのどこがいいんだ。
俺はAに、世間の女の子が望むような普通のデートひとつさせてあげられない。
もうすぐ30なんだぞ。一回りも違うんだ。
Aはきっとこれから色んな人と出会う。俺なんかを選ぶより、もっと幸せになれる道がある」
『……』
「それなのに…なんで俺なんだよ」
青い瞳は泣きそうに揺れている。
初めて聞いた本音を前に声は出なかった。
違う。違うんです降谷さん。だって、私が望んでいるのは──
返事をしようと口を開く。けれどその時。
「──囚われのお姫様を連れ出せて満足かしら、バーボン」
響いた声に、背筋が凍った。
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羽(プロフ) - とっっても良い話でした!!最後にお話を更新されてからかなり時間が経っているのでもうログインされていないかもしれませんが、どうしても伝えたくてコメントさせていただきました…!素敵なお話を書いていただきありがとうございました! (7月8日 22時) (レス) @page38 id: 9862219e48 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 2周目です!!本当にいい話、、大好きです。書いてくださり、本当ありがとうございました。 (2022年2月4日 23時) (レス) id: b375adba0d (このIDを非表示/違反報告)
m - 立夏さんのお話、内容がししっかりしてて面白くて…他にも作品書いてるのかなって思ったら過去に読んだ事ある作品ばかりですごい驚きました!全部すごい好きな作品だったので…Twitterのフォロー失礼致します! (2021年8月31日 12時) (レス) id: a52571fa0a (このIDを非表示/違反報告)
りー - 叔母様いい人や!姉さんの事好きだったんやな(´;ω;`) (2021年8月22日 22時) (レス) id: 6d65fc1765 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - 推しが尊いマンさん» わ〜!ありがとうございます!後半すごく悩みながら書いていたので本当に嬉しいです!最後までお付き合い頂きありがとうございました!! (2021年1月20日 2時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2019年4月5日 20時