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ベルモットは私に見透かすような目を向けて言う。
「あなた、私たちのことについて探ってるでしょう」
その言葉にグッと奥歯を噛んだ。
やっぱりバレてる。面倒な展開になった。
『あれは…たまたまです』
「嘘が下手ね。所詮はただの女子高生かしら」
そりゃそうだろう。こんな組織の幹部なんてやってる人と比べないで欲しい。
彼女は息を吐いて続ける。
「まぁいいわ。問題はあなたの記憶の有無よ」
『記憶?』
「急に私たちのことを調べ始めるなんて…
あなた、記憶が戻ったんじゃないでしょうね」
『は…?』
想定外のセリフに困惑を隠さず顔に出した。
記憶が…?なに言ってるんだ。
なくした記憶は5歳以前のものだ。今更戻るわけないだろう。
「もしくは最初から記憶喪失になんてなってなかったか…」
『なにを急に…』
怪訝な顔で彼女を見上げた。
大体、私の記憶が戻ったからってどうだというのだ。
『私は見てはいけないものでも見たんですか?』
「違うわ。誰も知らないことを知っているはずなのよ」
回りくどく答えたベルモットに眉が寄る。
そろそろ核心を言ってほしい。その思いを露骨に顔に出せば、彼女は口を開いた。
「桜小路が盗んだデータが入ったICチップがあるはずなのよ」
『ICチップ…?』
「その在り処をあなたは知ってる」
『……どこにそんな確証が』
「ないわよ。でも知ってるとしたらあなただけだわ」
ますます顔が歪んだ。
ICチップ?そんなものは知らない。
そんなことのために攫われてきたの?勘弁してほしい。仮に私がICチップの在り処を教えられてたとしても記憶は戻っていない。
「ICチップの場所を吐けばここから出してあげるわよ」
…十中八九嘘だろう。チップを回収した瞬間に撃たれるのが見え見えだ。
『そんなの知らないです』
「じゃあ思い出しなさい」
『…思い出せなければ?』
「私たちのことを嗅ぎ回っていたあなたを生かしておく理由はないわね」
どっちみち待ってるのは死じゃない。
黙り込んだ私にベルモットは笑い、一歩離れた。
「なるべく早く吐くことね」
そう言って彼女は出ていく。
重たい錠がかけられる音が響く。
部屋の中にはただ静けさと薄い暗闇が広がっていた。
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羽(プロフ) - とっっても良い話でした!!最後にお話を更新されてからかなり時間が経っているのでもうログインされていないかもしれませんが、どうしても伝えたくてコメントさせていただきました…!素敵なお話を書いていただきありがとうございました! (7月8日 22時) (レス) @page38 id: 9862219e48 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 2周目です!!本当にいい話、、大好きです。書いてくださり、本当ありがとうございました。 (2022年2月4日 23時) (レス) id: b375adba0d (このIDを非表示/違反報告)
m - 立夏さんのお話、内容がししっかりしてて面白くて…他にも作品書いてるのかなって思ったら過去に読んだ事ある作品ばかりですごい驚きました!全部すごい好きな作品だったので…Twitterのフォロー失礼致します! (2021年8月31日 12時) (レス) id: a52571fa0a (このIDを非表示/違反報告)
りー - 叔母様いい人や!姉さんの事好きだったんやな(´;ω;`) (2021年8月22日 22時) (レス) id: 6d65fc1765 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - 推しが尊いマンさん» わ〜!ありがとうございます!後半すごく悩みながら書いていたので本当に嬉しいです!最後までお付き合い頂きありがとうございました!! (2021年1月20日 2時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2019年4月5日 20時