顔が良ければ全て良しだって未だに思ってるだろ！！【降谷零/安室透】

after：出られない部屋 ページ48

“相手の好きなところを10個言わないと出られない部屋”


『｢顔｣』


言ったのは同時だった。

そしてその2音が放たれたあと、部屋には長い沈黙が降りる。

これがドラマなら恐らく1カメ、2カメ、3カメと巡りもう一度1カメに戻ってきているだろう。尺が余ったのかと疑われてしまう。

互いに何も言わないまま互いを見つめ、そのままの姿勢で止まり、数十秒が経過。

次の瞬間、私と降谷さんは図ったように双方息を揃えて叫んだ。


『｢他にももっとあるだろ！！！！！！！｣』


いや、なんで｢顔｣だけ言って黙るんですか？？？
顔以外にもあるでしょ？？顔以外にも私の好きなとこあるでしょ？？？

しかしそれは見事にブーメランとなって私のコメカミにぶっ刺さる。黙ってしまったのはこちらとて同じなのだ。


｢顔だけじゃないだろ！！？？俺は顔だけの男じゃないだろ！！！？？お前の俺への愛はそんなものか！！？？｣

『そっくりそのままお返ししますよ！！もっとポンポン出るでしょうが！私の好きなとこ！！』

｢目、鼻、口｣

『さいっっってーーー！！！！』


壁に埋め込まれた2つの数字はどちらも9から動かない。ほらほら！顔のパーツ言ってもカウントされてないじゃん！顔と一緒だもん！


さて、冒頭の文言はこの部屋の壁に書かれていたものである。

細かい説明は省くがどうやらそういうことらしい。

よくわからないが、まぁ好きなところを10個言うくらいで出られるならお安い御用だ。

いや、まぁ、ね？今のはさすがにおふざけだ。真面目にやればちゃんと言えますよ、10個くらい。


しかし今ので妙な対抗心が芽生えてしまった。私はハッと鼻で笑って腕を組んだ。

いいですよいいですよ、言ってやろうじゃないですか、好きなところ！！


『幸せすぎて泣いちゃった時に何も聞いてないのに“泣いてないからな”とか“まつ毛が目に入った”とか1人で弁解し始めるとこ！！！！』


うっ、と降谷さんの表情が明らかに歪む。しかしこちらが勝ち誇るにはまだ早い。

彼はすぐに態勢を立て直し、反撃を開始してきた。


｢不意打ちで照れさせられたら“肉が食べたい”とかわけのわからん話の逸らし方するとこ！！！！！｣

『実はパソコンの中に私の写真ばっか入れたフォルダ作ってるとこ！！！！』

｢酒に酔って甘えてくる時の9割が本当は全くもって酔ってないとこ！！！！｣

『私が寝てる時間に帰ってきたら私の寝顔絶対5分は眺めて最後におでこにキスするとこ！！！！！』

｢気づいてるなら起きろよ！！！｣

『気づいてても眠いんですよ！！』

02→←03

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す