顔が良ければ全て良しだって未だに思ってるだろ！！【降谷零/安室透】

03 ページ44

『いくらなんでも見すぎっすよ降谷さん』


6時間目の最中の誰もいない体育倉庫。

私は少し遅れてやってきた彼に、開口一番そう言った。

降谷さんも降谷さんで心当たりがあるのか、目を逸らして返す。


｢だって教師やってるAなんかこの潜入が終わったら見れないだろ｣

『だからってあれは流石にやばい。セクハラですよ。視姦もいいとこですよ』

｢俺が教師役だったら同じことするくせに｣

『なるほどそれは否定できませんね』


先生やってる降谷さんか〜あんまり想像つかないけど。

埃っぽいマットを払って腰を下ろす。

足を組めばまたしても凄まじい視線を感じた。だから見すぎだって。


｢お前それ絶対スカート短すぎだろ｣

『昨日まではここまでじゃなかったですよ。今日は校長とご飯に行くので』

｢は！？お前そんなとこまでいってたのか！？聞いてないぞ！｣

『だから今言ったじゃないですか。
ちょっと笑いかけたらコロッと落ちましたよ、チョロすぎる』


セクハラといえばあの校長こそセクハラおやじだ。

何度か触られたけど笑って流した私はえらい。まぁ情報のためならセクハラくらい安いもんだけど。

降谷さんは顎に手を当てて何かを考え込んでいる。

バットに球が当たる音が遠くで聞こえた。


｢決めた。今夜は俺も後ろからついていくよ｣

『え？別にいいですよ、どうせ二人だし』

｢念の為だ。盗聴器もつけてやろうか？｣

『うわやだ。上司の聞いてる中でのハニトラってほんとやりづらいんですよ、勘弁して下さい』


そう言ってため息をついた時、近くでガタンと物音が鳴った。

反射的に２人で物陰に身を隠す。

ボールを取りに来たらしい生徒が倉庫の中に入ってきて、降谷さんと密着して息を詰めた。

うっっわ近くで見ると本当に顔が良いなこの人は。

さっきガン見された仕返し見つめていれば、こっちに気がついた降谷さんと至近距離で目が合った。

男子生徒が倉庫を出ていく。遠くで歓声が響いた。


｢…なんだよ｣

『いえ……降谷さんと高校生活送れたら楽しかっただろうなって』

｢え？｣

『体育倉庫で２人きりなんてド定番じゃないですか。なんてね』


クスッと笑って立ち上がる。そろそろ戻らなければ。

降谷さんとの高校生活かぁ。
2歳差だから…私が高１なら彼は高３か。


『早く行きますよ、降谷センパイ』


なんて言って笑いかければ、固まっていた彼はいよいよ顔を覆ってしまった。


｢もっかい言ってくれ｣

『最早なんでもありか』

parallel：ミステリアスアクトレス→←02

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す