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「お前さ、俺がなんであの時逃げたかわかってる?」
『そ、れは…』
「いいよ答えなくて。多分わかってくれてるから。
あの日以来、Aを失うことに酷く怯えるようになったんだ。
左手が動かなくなってからハニトラの回数は大分減ったけど、いつも気が気じゃなかった。
ろくに戦えもしないお前を送り出すのが辛かった。
本当のことを言うと、お前が警察官をやめてからはハニートラップなんてさせたくなかったんだ。
警察官じゃなければ拳銃を持つこともできない。それまでに比べれば危険さはもっと上がる」
『……』
「それでもなにも言わなかったのは、あの時俺とお前の間には協力者っていう繋がりしかなかったから。それがなくなれば会う理由すらなくなったからだ」
淡々とそう続ける彼に、唇を噛んだ。
そんな話、聞いたこともなかった。
そんなことを思ってくれていたなんて、思いもしなかった。
「もうわかるだろ?
危険な目に遭わせたくないんだ。Aが大丈夫だって言っても俺が嫌なんだ。ただの俺のわがままだけど、これだけは譲れない。
…昨日も、お前が拳銃を突きつけられてるのを見て心臓が止まりそうになった」
──なんてことをしてしまったんだろう。
私はバカだ。
なんにも考えずに突っ走ってしまった。
彼はずっと、こんなにも私のことを考えてくれていたのに。
さっきまでとは比にならないくらいの反省と後悔の念が渦巻く。
街灯に照らされた横顔に涙が出そうになって、ぎゅっと拳を握りしめた。
『…ごめん、なさい』
「…うん」
やっと彼の顔が緩く綻ぶ。
今回のことは許してくれたらしい。
どうやら今後も工藤邸の敷居を跨ぐことはできそうだ。
正直、自分のことは二の次だと思っていた。
元々の職業があれなのだ。国民の安全を脅かす奴がいるなら多少危険な目に遭っても情報を引き出すくらいすべきだと思ってた。
でも今の私は警察官でもなんでもないただの本屋の店員で。長い間訓練をしてない体はなまりまくりだし、片手では護身術すら満足に使えない。
そんな私がこんな行動に出ることの意味を、もっと考えるべきだった。
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なでぃあ - すみません💦立夏さんの作品一覧の中でパスワード保護がかかっている作品を読みたいのですがパスワードを教えて貰えないでしょうか? (2023年1月10日 21時) (レス) id: b7c646722c (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - over the rainさん» ありがとうございます!!私の文章で幸せになって頂けたなんて私の方が幸せです!笑 ありがとうございました!! (2020年3月14日 22時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
over the rain - 話の構成も文章の書きかたも素敵で、幸せな気分です!これが神だ。嬉しくて泣けました(マジ)応援してます! (2020年3月5日 10時) (レス) id: a4bab14be1 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - なのなの-VIIさん» わぁ〜!とってもご無沙汰な更新でしたが読んで頂けるなんてすごく嬉しいです!!ありがとうございます!!私もはっぴー満点で眠れます!笑 (2020年2月9日 0時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
なのなの-VII(プロフ) - 更新ありがとうございます! めっちゃ嬉しいです! おかげで幸せな気分で寝れます! (2020年2月8日 23時) (レス) id: 3d69e77dfd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2018年11月18日 21時