寄せては、返して。(yt×in) (ページ10)

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「な、中島先生、ちょっ、待って……！」
腕を引っ張る俺に戸惑う伊野尾先生に、
「腕、痛かったですか？すみません。」
腕から指を離して、伊野尾先生の手を握って、
「これで走れますか？」
俺が聞くと、
「いや、そういう問題じゃなくて、手、繋いでるって……。生徒に見られたらどう説明するんです！？」
珍しく声を荒げる伊野尾先生に、

「学校サイドには内密に。」

俺がふふっと笑って言うと、目を大きくまん丸くしてから、

「………それじゃ付き合ってる事になるよ。」

くしゃっと苦笑いするから、
「まぁまぁ細かい事は後で。……お、クラブか？」
サッカーボールを持ったクラスの生徒にすれ違って俺が声をかけた。
すると、
「ちわっ！って、先生達、手、繋いでるじゃん。」
いきなり見つかるから、
「学校サイドには内密に。」
さっそく言った。
その瞬間、伊野尾先生の肩が揺れる。
怒ったかな？と顔を覗き込むと笑うのを我慢していた。
本当に言った、って、目を細めて口を手で押さえて。
そんな伊野尾先生に胸がときめくのを感じて、俺は繋いでいない方の手で自分の胸を押さえた。

まだ名前をつけちゃいけない。
このときめきに、気持ちに。
それは早すぎる。
謎はまだとっておきたいから。