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「止みませんねぇ。」
職員室の窓をぱたぱたと打つ、幾つもの雨粒を見ながら言う俺に、
「梅雨ですから。それより今、忙しいんで話しかけないでもらえますか？」
伊野尾先生は淡々と、でも必死に何か資料のようなものを机の上に広げて見入っている。
仕方ないと、自分の仕事に取り掛かろうとする俺に、
「……ただの八つ当たりです。ごめんなさい。」
伊野尾先生が小さく謝ってきた。
「まだ1年生なのに進路で悩んでる子がいて。頼もしくて何よりなんですが、俺、まだそこまで考えてなくて情けなくて。」
ちらっと俺の方を見上げて、
「中島先生なら多少騒がしくても、明るくて包容力ありそうだし、こんな時、きっと悩む生徒の心を軽くできそうですね。」
切なそうに微笑んだ。
ほんの少しの嫌味と、それを消し去る位に優しい言葉と一緒に。
不思議な人だな、本当に。
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作者名：すみれ | 作成日時：2023年6月29日 2時
