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「……中島先生は嘘つきだな。十分、このお店だけで大人っぽいです。」
伊野尾先生が淡々とおしぼりで手を拭きながら、俺がたまに来る、昼はカフェ、夜はバーになるお店に連れて行って注文を終えてから文句を言ってくる。
けど職員室と違って向かい合わせの席だから、どうしたってさっきみたいに自然と目線が合うのが嬉しくて、
「年齢的にこういうお店に入れるってだけで。けど。」
運ばれてきたぽってりとしたワイングラスに入った泡の綺麗なビールを俺が持ち上げて、
「約束したから、大人の時間って。俺なりに精一杯背伸びします。」
グラスを掲げると、無表情で伊野尾先生もグラスを掲げてくれるからカチンと合わせる。
ひと口俺が呑むと伊野尾先生も呑んで、
「美味しい…！さすがバーですね。」
途端に笑顔になった。
やっぱり可愛い。
本当はとても素直な人なんだ。
恋愛に不慣れで怖がる素直な子供。
俺にだけ不慣れな、愛しい人。
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作者名：すみれ | 作成日時：2023年6月29日 2時
