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休憩室でぐったりと机にうつ伏せになってる俺に、
「大貴、そんなに落ち込まないで?」
雄也が声をかけてくる。
「…………落ち込むよ。俺の傷を心配してくれてるお前を叩くなんて……。」
ぐずぐずとさらに落ち込む俺。
ことっと、そんな俺の隣に何かが置かれる。
のそのそと顔だけ上げると紅茶のペットボトルが置かれてあった。
じっとそれを見てから、よいしょと起き上がる。
しっかりしなきゃ、歳上なんだから。
俺の正面に座りかけてる雄也に、
「おいで。」
隣のパイプ椅子をひいて言った。
目を大きく開いてから、ありえないくらいに素早く動いて雄也がその椅子に座る。
そしてお互い椅子ごと向かい合ってから、
「………来たよ。」
照れて目を逸らしながら雄也が言った。
可愛い。
気が付けば自然に右手で雄也の左の頬を撫でて、
「良かった、跡になってない。」
なんて笑って。
そんな俺の前髪をまた雄也が指でかき上げる。
「びっくりさせてごめんね。キス、慣れてないんだね。」
言葉とは裏腹にもう一度おでこに、ちゅっとキスしてくる。
「俺のキスには慣れてね。」
そんな言葉と一緒に。
ドキドキするって、こんなの。
目を閉じるともう一回、キスされた。
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作者名:すみれ | 作成日時:2024年3月22日 2時