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「……………1237円になります。」
レジで会計した金額を俺が言う。
「袋は要りません。」
バイトが休みの雄也が先回りして言って、紙袋に入った雑誌を脇に挟んだ。
「レシートもいいです。…これ、読んでくれたら。」
四角く折られた小さな紙を渡してくる。
『バイト終わったら俺と遊ぼう。』
エプロンにくしゃっとその紙を入れて次のお客様のお会計を済ます。
古いを超えてもはやこれは昔話だぞ。
昔々、一目惚れに近い恋をした2人は、どんな困難にも負けない糸で結ばれてるってやつ。
恋。
どくんっと、心臓が鳴る。
キスされた時みたいに。
………違う、責任感だ。
冷静になろうとする自分。
そんな俺を雄也が待ってた。
バイトが終わって店の外に出てきた俺に、
「大貴、あの公園に行こう!でさ、バスケで一対一して、俺が勝ったら大貴に言いたい事があるんだ。」
雄也がそう言って俺の手を握って走り出す。
冬の夜風は冷たくて、頬がちぎれそうなのに熱い。
勝負して、ゴールして勝って欲しい。
そう思う。
アシストするみたいにパスしたら、雄也はどんな顔するかな?
またひとつ、大きく心臓が鳴る。
雄也の指にそっと指を絡めた。
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作者名:すみれ | 作成日時:2024年3月22日 2時