明けても、暮れても。 (ページ10)

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「暑いんだけど。」
5月の真昼は日差しがとにかく暑い。

屋上で髙木と隣り合わせに座りながら、髙木のジャケットを羽織って額の汗を拭う俺に、
「そりゃまぁね、昼間だし。脱いだら？」
髙木がサンドイッチを袋からガサガサと取り出す。
「いや、貸してって言ったの俺だし。」
ぼそぼそと言うと、
「照れ隠しで、だろ？ほら。」
髙木が俺の体の後ろに腕を回してくるから、思いっきりドキドキしてる間にするっとジャケットを脱がされた。
「…ありがと。」
お礼を言う。
髙木が親指で俺の額の汗を拭って、さらにドキドキしてると、
「裏向きの理由、教えるよ。」
その指で俺の唇をぷにっと押してきた。

「彼女に嫉妬してる。だからキスしていい？」

低く甘い声。
逆らえない。
俺が自分から少し顔を傾けると、重なる唇と唇。
　

「………お腹空いた。」
照れて呟くと、
「ハンバーグの入ったサンドイッチ、あるよ。」
俺のおでこに自分のおでこをひっつけてくる髙木。
「……あのさ、結婚を視野に、なんて嘘だから。」
俺の言葉に、目を伏せて髙木が微笑む。
「そっか。良かった。」
なんて言って。
ドキドキからきゅっと胸が痛んだ。

はまっていく、どうしようもなく髙木に。
彼女と別れなきゃ。
でも髙木。

俺を好きだって、お前はまだ俺に言ってくれてないんだ。