月の下で待ってて (tk×ar) (ページ8)

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「髙木先生、有岡ですよ。」
中島先生が俺に声をかけてくるからなんとか心を落ち着かせて、中島先生と、そして有岡の方を向いた。
目が合う。
すぐに逸らす有岡。
めげずに声をかける。

「おはよう。有岡、どうした？」

………唇、随分赤いんだな。

そんな事を思いながら俺を見ない有岡を見つめていると、
「おはようございます。あの、俺、中島先生に用事があって来たんで。」
素っ気なく言われた。
中島先生が、俺に？と聞くと、中島先生を見上げてにこっと笑って、
「はい。少し相談したくて。」
有岡が穏やかに言った。
苦いどころか痛い気持ちでいっぱいになる。

キス、夢かよ。
声、聞き間違えた？

自分がみっともなくて、無駄に早く職員室を出ようと立ち上がると、
「何の相談？授業の話ならもちろん聞くけど、それ以外なら髙木先生に相談しないと。…ね、髙木先生？」
中島先生の柔らかい声が聞こえて立ち止まる。
その柔らかさに、唇の柔らかい感触をふわっと思い出した。

もう一度だけ。

合うわけないけど、もう一度だけ有岡を見て、もし、目が合ったら。

「…………放課後でいい？進路指導室で。」

不安そうな、でも俺を見る有岡の目に言った。